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OUI Inc.のSDGs取組みとは?ピンポイントでのUHC貢献を紹介

作成者: ツヅケル編集部|2022/10/13 8:44:37

OUI Inc.は、2016年に設立された慶應義塾大学医学部発のベンチャー企業です。現役医師の視点を生かし、日々の業務での問題点に解決策を見出す活動を行っています。

大きな特徴となるのが、現役眼科医の発案による「Smart Eye Camera(SEC)」です。SECとはiPhoneのアタッチメントで、場所を選ばずに眼科疾患を診断できます。小さく手軽であるため、どこでも眼科的診療が可能です。

OUI Inc.のSECを使った取組みと、そこから派生した取組みについて紹介していきます。

ピンポイントでユニバーサル・ヘルス・カレッジに貢献するOUI Inc.について、取組みの内容をチェックしてみましょう。

 

 

【Pick UP】「ツヅケル」が注目したOUI Inc.のSDGs取組みのポイント

  • ベンチャー企業によるIT技術を駆使した取組み
  • ユニバーサル・ヘルス・カレッジへの多大な貢献

 

OUI Inc.のSDGs取組み方針

OUI Inc.では「2025年までに世界の失明を半分にすること」を目標として掲げています。現在は、失明や視覚障害を救う活動を中心に展開しています。

 

OUI Inc.が「VALUE」として掲げているのが以下の3つです。

◆患者第一主義
私たちは、現役医師による会社であり、現役医師の視点を活用した医療課題解決を行います。患者の治療と世界中の健康維持/増進を目的に行動し、常に患者さんの利益を念頭において行動します

◆エビデンスファーストの徹底
医療のベースである、根拠に基づく医療 (Evidence-Based Medicine : EBM)を徹底するために、常に最先端の医療に関わり続けます。

◆医療現場に還元し続ける
医療の発展のために、得られた知見や技術を、医療現場に還元し続け、世界の医療発展に貢献することで、最高の医療を創造します。

(引用:OUI Inc.)

公式ホームページ上では、SDGsについての項目は設けられていません。しかし取組みの内容はSDGsの目標に大きく関係しています。

現在は眼科分野に特化していますが、今後新たな分野への展開も期待できるでしょう。

 

 

今回はOUI Inc.のSDGs取組み事例が推進するSDGsについて、取組み事例をご紹介いたします。

 

 

 

OUI Inc.のSDGs取組み事例①Smart Eye Camera (SEC)と眼科診断AIの発明

OUI Inc.は、スマホアタッチメント型医療機器であるSECと眼科診断AIを発明しました。SECと眼科診断AIがあれば、どこでも安価での眼科診断が可能です。途上国を中心としてSECは100台以上展開され、年間15,000件以上の診断が行われました。

SECを使った活動は、SDGsの目標3「すべての人に健康と福祉を」に該当します。

また失明や視覚障害を予防できれば、以下の目標達成への貢献も可能です。

  • 目標1 貧困をなくそう
  • 目標2 飢餓をゼロに

失明や視覚障害は仕事にも直結し、貧困や飢餓にもつながるものだからです。

取組みは、ユニバーサル・ヘルス・カレッジに多大な貢献をしたとして高く評価され、第5回ジャパンSDGsアワードでは、SDGs推進副本部長(外務大臣)賞を受賞しています。

IT技術を活用してSDGsに取組むのなら、OUI Inc.は良いロールモデルです。OUI Inc.のように、特定分野での課題を洗い出して対策を行ってみるのも良いでしょう。

 

参照:ジャパンSDGsアワード | JAPAN SDGs Action Platform | 外務省

参照:OUI Inc. 

 

 

世界の失明人口と失明原因

OUI Inc.では失明と視覚障害に対する、ピンポイントでの取組みを行っています。その理由となっているのが、世界の失明人口です。

失明人口は世界で3,600万人にも上り、30年後には1億2,000万人にも増加する見込みとなっています。失明の主な原因となっているのが白内障です。白内障は種類により原因に違いがあります。

 

白内障の種類

主な原因

加齢性白内障

 加齢

糖尿病性白内障

 糖尿病

アトピー性白内障

 アトピー性皮膚炎

先天性白内障

 妊娠中の風疹など

外傷性白内障

 目の怪我

併発性白内障

 ぶどう膜炎・網膜剥離・緑内障など

その他

 ステロイド剤・放射線など

 

白内障を放置していると、視力低下・急性緑内障発作などにつながります。進行すると手術が必要ですが、初期なら点眼薬で進行を抑えることが可能です。そのため途上国での失明や視覚障害を減らしていくには、早期で眼科診療が受けられる体制づくりがが求められます。

「世界の失明を半分にする」というOUI Inc.の目標は、けっして非現実的ではありません。SEC活用で眼科診療が受けられる地域を増やし、適切な治療が受けられる環境が整うと、失明率の大幅な減少も可能でしょう。

 

参照:白内障 - 目の病気百科|参天製薬

参照:OUI Inc. 

参照:失明や視力障害が世界的に増加の見込み、原因は?|CareNet

 



SECによるOUI Inc.の受賞歴

Smart Eye Camera (SEC)と眼科診断AIの発明は、第5回ジャパンSDGsアワード以外でも多くの賞を受けました。そのなかから一部を紹介します。

 

  • 2018年1月「慶應義塾大学医学部主催健康医療ベンチャー大賞」社会人部門 優勝・オーディエンス賞
  • 2020年10月「第2回 日本抗加齢協会 ベンチャー大賞」ヘルスケアイノベーションチャレンジ賞
  • 2020年12月「東京ベンチャー企業選手権大会2020」最優秀賞(東京都知事賞)
  • 2021年1月「ジャパン・ヘルスケアビジネスコンテスト(JHeC)2021」ビジネスコンテスト部門優秀賞
  • 2021年5月「Vision Hacker Awards 2021 for SDG 3」シード賞

OUI Inc.は、まだ設立して数年のベンチャー企業です。しかし医療分野への貢献は大きく高い評価を受けています。受賞によりOUI Inc.は資金提供や専門的なサポートを受け、取組みの拡大が可能です。

 

参照:OUI Inc. 

参照:「ジャパン・ヘルスケアビジネスコンテスト(JHeC)2021」グランプリが決定しました! (METI/経済産業省)

参照:ビジョンハッカー支援アワード | Vision Hacker Awards 2021 for SDG 

 

 

OUI Inc.のSDGs取組み事例②眼鏡やサングラスの寄贈

OUI Inc.は、株式会社メガネトップと共同で、眼鏡やサングラスの寄贈を行っています。

株式会社メガネトップとは、「眼鏡市場」「ALOOK」などを運営していて、「目に関わる社会貢献活動」に力を入れている企業です。

2社はこれまでにマラウイ共和国とケニアへの寄贈を行いました。この取組みはSDGsの目標3だけでなく、目標17の「パートナーシップで目標を達成しよう」にも該当します。

 

  • 2021年……マラウイ共和国のNGOであるBICOにメガネフレーム570本・レンズ1,500枚以上を寄贈
  • 2022年……ケニアの眼科病院Kisii Eye Hospitalにサングラス1,156本を寄贈

一企業が他国の経済状況を変えるのは現実的に不可能です。しかし特定の分野への支援なら継続して続けられます。自社でSDGs取組みを検討しているのなら、OUI Inc.のようにピンポイントでの支援をする方法もあるでしょう。

寄贈先でどのように活用されているか、それぞれ紹介します。

 

 

マラウイ共和国のBICOにメガネフレームとレンズを寄贈

マラウイ共和国は世界最貧国の1つです。人口約1,800万人に対し、眼科医は14人しかいません。その眼科医のうち1人によって、眼科医療の発展や眼科医の教育を目的に創業されたのがBICOです。

マラウイには、メガネを買う経済的余裕のない患者が大勢います。その結果として視覚障害を矯正できず、教育を受けられずにいる子どもも多いのです。視覚障害を持つ高齢者・子どもにとって、メガネは大きな助けとなります。

OUI Inc.は2019年から、BICOとの協働でSECの実施テストを行っていました。眼科診療支援について協議を行ってきた経緯もあり、BICOはメガネフレームとレンズの寄贈先として選ばれています。

 

参照:OUI Inc. が「眼鏡市場」を全国展開するメガネトップと共同で570本のメガネをマラウイに寄贈|株式会社OUIのプレスリリース

参照:メガネフレーム・レンズ寄贈のお知らせ | 株式会社メガネトップ

 

 

ケニアにサングラスを寄贈

眼科医不足が深刻なケニアでは、予防可能な眼科疾患による失明が大きな課題です。

Kisii Eye Hospitalでは眼科医療へのアクセスが難しい農村部の患者を対象に、年間10,000人を超える白内障手術を行っています。しかし白内障の手術後は、紫外線・ホコリ・風から目を守るサングラスが必要です。

そこでOUI Inc.と株式会社メガネトップでは、ケニアに1,156本のサングラスを寄贈しました。寄贈されたサングラスは、経済的事情で購入が難しい患者に無料で渡されています。

 

参照:慶應義塾大学医学部発のベンチャー企業 OUI Inc. と業務提携 共同で1,156本のサングラスをケニアに寄贈|株式会社メガネトップのプレスリリース

参照:株式会社OUIと共同で1,156本のサングラスをケニアに寄贈 | 株式会社メガネトップ





ピンポイントでのUHC支援を行うOUI Inc.

SDGsの目標3に掲げられているのが、ユニバーサル・ヘルス・カレッジです。

UHCとは「すべての人が、適切な健康増進、予防、治療、機能回復に関するサービスを、支払い可能な費用で受けられる」ことを意味し、すべての人が経済的な困難を伴うことなく保健医療サービスを享受することを目指しています。

(引用:ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC) | 国際協力・ODAについて)

 

国際社会の協力により、UHCでは大きな成果が見られています。しかし全世界で見ると、人口の約半分は健康を守る基礎的なサービスにアクセスできないのが現状です。

 

OUI Inc.のようなピンポイントでの支援により救われる人も大勢います。大きな取組みも重要ですが、OUI Inc.のようなピンポイントでの支援は今後ますます必要とされるでしょう。

医療分野への取組みには、当然ながら専門的な知識が必要です。しかし医療分野に限らず、OUI Inc.の取組み方法は大きな参考として使えます。自社技術をピンポイントでSDGs取組みに活用できないか、検討してみてはいかがでしょうか。