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コカ・コーラのSDGs取組みとは?グローバル企業だからこその先進的で超現実的なロードマップに迫る

作成者: ツヅケル編集部|2022/06/27 7:53:05

 日本コカ・コーラ(以降、コカ・コーラ)は二位のサントリーの約2倍の出荷量を誇る、国内トップの清涼飲料水メーカーです。主力商品のコカ・コーラシリーズはもちろん、アクエリアスや爽健美茶、い・ろ・は・すや最近話題になった缶チューハイ「檸檬堂」など多様なラインナップを展開しています。

日本の消費者と最も密接な企業のひとつで、なおかつグローバル企業でもあるコカ・コーラは、今注目の「SDGs(持続可能な開発目標)」に対してどのような方針・取り組みを行っているのでしょうか。最新事例も交えながら詳しくお伝えしていきます。

写真(Fotazdymak / Shutterstock.com)

 

【Pick UP】「ツヅケル」が注目したコカ・コーラのSDGs取組みのポイント

  • あくまで「本業」を通じてSDGsへ貢献するという基本スタンス
  • 達成に向けての「超現実的」な取組み姿勢
  • 「活動・実績」の積み重ねで、信頼を醸成してきた実績
  • グローバル企業ならではの多様性・人材育成へのアプローチ

 

コカ・コーラのSDGs取組み方針

まずは、コカ・コーラのSDGsの取り組み方針のサマリーから見ていきましょう。

 コカ・コーラは「本業を通じて社会課題を一歩一歩解決していく」という理念に基づき、SDGsの取り組みを推進しています。具体的には下図の通り「多様性の尊重(Inclusion)」「地域社会(Communities)」「資源(Resources)」の3つのプラットフォームと、直近に手を付けるべき重点課題9項目を定めています。

 

出典:コカ・コーラシステムのサステナビリティーフレームワーク

本記事では、9つの重点課題の中でもコカ・コーラが「喫緊の課題であり即座に対応が必要」としている優先事項の5項目について、取り組み内容と事例をご紹介いたします。

 

【コカ・コーラの優先事項5項目】

コカ・コーラのSDGs取組み事例①:水資源の保全

本業で「水資源」を使用したビジネスを展開するコカ・コーラ社では、SDGsの目標6「安全な水とトイレを世界中に」に基づき、「2030年までに水の使用量を30%削減する」「2025年まで水源涵養率200%維持」という目標を掲げています。 

日々の業務においては、工場の製造プロセスの改善をすることで節水に努めると同時に、製造に要した水と同等量の水を自然に戻すことも実施。また、水源地域や学識者とともに水資源保護の取り組みを進めており、2020年の水源涵養率は前年から24%高い364%を達成しました。 

まさに「本業」を通じてSDGsへ貢献するという基本スタンスの典型的な取り組みですね。

またミネラルウォーターブランド「い・ろ・は・す」の売上の一部を、日本各地の森林保全活動の寄付に充てる「い・ろ・は・すの森活」プロジェクトも実施。天然水を育む豊かな森林を未来の世代に引き継ぐ活動を継続しています。

売上の一部を還元することで「顧客もコカ・コーラのSDGs活動に参加できる」ということ。エシカル消費を促進する施策であると同時に、マーケティング部のCRM(カスタマー-リレーションシップ-マネジメント)の設計などにも応用できそうですね。

出典: 「資源」への取り組み| 社会との共創価値(CSV)

 

水源保全プロジェクトの取り組みをWebムービーで発信

またコカ・コーラはこうした取り組みの広報にも力を入れています。この水源保全プロジェクトに関しても専用のWebムービーを制作し、現地の人々と社員が協力して水源である森林の保全活動を行う様子を自社の想いを込めてわかりやすく発信しています。

出典:コカ・コーラ

 

コカ・コーラのSDGs取組み事例②:容器/PETへの取り組み

本業を通してのSDGsの取り組みをもう一つご紹介します。

コカ・コーラはSDGsの目標12「つくる責任 つかう責任」に基づき、廃棄物ゼロ社会を目指して、2018年1月に「容器の2030年ビジョン」を設定しました。2025年までに全てのペットボトル容器の原材料をサステナブル素材に切り替え、2030年までに販売量と同等のペットボトルを回収できる体制を構築するというロードマップを掲げ、推進しています。 

具体的な取り組み事例としては、コカ・コーラやジョージアなどの主力商品の使用済みペットボトルを原材料として製品に生まれ変わらせる「ボトルtoボトル」活動などを実施。ボトル一本製造あたりのCO2排出量を約60%削減することに成功しています。 

また、100%リサイクルペットボトルや分別の手間がかからないラベルレスボトルなどの循環型社会実現への取り組みが評価され、2020年に第21回グリーン購入大賞プラスチック資源循環特別部門 大賞など複数の賞が授与されました。

思い起こせば、国連サミットでSDGsが採択された2015年9月より遥か以前から軽量化ペットボトルの「い・ろ・は・す」を製品化していたコカ・コーラ。掛け声だけでなく「行動」で環境リーダーシップをとり続けてきた企業姿勢が、多くの消費者に支持される要因なのかもしれません。

出典:「資源」への取り組み | 社会との共創価値(CSV)

 

「い・ろ・は・す」ブランドサイトでのSDGs取り組み発信

出典:コカ・コーラ「い・ろ・は・す」ブランドサイト

「い・ろ・は・す」のブランドサイトでは、製品情報より遥かに多くのSDGs関連情報が掲載されています。上述した水源保全の活動については「森活」として1ページを割いてまとめられています。さらにペットボトルが実際どのようなプロセスで再資源化されていくのかについて「ボトルtoボトル」の過程を図解したり、自社のリサイクルセンターにおける再資源化の取り組みをわかりやすく図解したりしながら、い・ろ・は・すに関するSDGsの取り組みをPRしています。

 

コカ・コーラのSDGs取り組み事例③:地域社会への貢献

出典:コカ・コーラの地域社会への取り組み:社会との共創価値(CSV)

地域社会への貢献に関するコカ・コーラの取り組みは「地域社会が健全であることが、持続的な事業活動の前提である」という考え方に基づいています。多くの活動は地域で働く社員と地域住民が一緒になって行われています(SDGs目標11「住み続けられるまちづくりを」)。

主な取り組みとしては、環境教育プログラム「森に学ぼう」プロジェクトや、フードバンクを使った支援や自治体と連携した飲料水の提供、「アイデアソン・ミエミライ」や「仙台若者アワード」といった地域の若者とのワークショップイベント、さらに各地域の特色を生かしたデコレーション自販機の設置や工場見学など、本業を活かした地域社会への貢献活動によって地域との深い関係性を育てています。

近年ますます被害が増加している大規模災害に備えて、2020年末時点で1,059の自治体と災害協定を締結しています。避難所などへの速やかな飲料水の配給や自販機内の製品の無償提供など、いざという時のための迅速なライフライン確保に向けた取り組みを進めています。2019年に発生した大型台風では、政府からの要請に応えて迅速に被災地へ製品配給を実施し、農林水産省より感謝状が贈られています。

単なる物品の提供だけでなく、地域住民とアクティビティを共にしながら着実に根を張っていく。豊かな水資源を育む「森」を相手にしている企業だからこそ、地道な活動が積み重ねられているのでしょう。

参照:コカ・コーラの地域社会への取り組み:社会との共創価値(CSV)

 

コカ・コーラのSDGs取組み事例④:ジェンダー平等

出典:経済産業省 | 「令和2年度 なでしこ銘柄レポート」

次はグローバル企業であるコカ・コーラならではの取り組みです。常に消費者に選ばれ続ける製品を作る企業であるために、コカ・コーラは社員の「多様性」も重視しています(SDGs目標5「ジェンダー平等を実現しよう」)。育ちや嗜好の違った様々なバックグラウンドや考え方を持った社員が、遺憾なく能力を発揮し合える職場。そこから永く愛される商品が生まれると考えているのです。

たとえばジェンダー平等については「2025年までに女性管理職比率6%」と掲げていた目標を2021年1月に4年も前倒しで実現しました。以降も「2025年に10%、2030年には20%に引き上げる」という高い目標を設定しています。

同時に、全ての社員が多様性を深く理解し、互いを尊重し合える組織文化を根付かせるために「アンコンシャスバイアストレーニング」や「インクルーシブリーダーシップトレーニング」などの社員教育や、配偶者出産休暇制度の充実など、あらゆる角度から女性活躍を支える活動を進めています。

その取り組みの結果、2022年には経済産業省が選定する「準なでしこ銘柄」に3年連続で選定されています。

予定を大幅に先取りする目標達成の裏には、組織を動かす時にその対象である「女性」のトレーニングだけでなく、周囲の社員の意識改革も同時並行で行う。このグローバル経営で培われた徹底的なリアリズムは、今後経営企画室や人事部で必須の視点となるでしょう。

参照:経済産業省 | 「令和2年度 なでしこ銘柄レポート」

 

コカ・コーラのSDGs取組み事例⑤:年齢・世代間の平等

今後ますます進展するグローバル化に適応し、成長を続けていくためにコカ・コーラでは、SDGsの目標10「人や国の不平等をなくそう」に基づき、次代を担う人材育成にも積極的に取り組んでいます。

 

コカ・コーラユニバーシティジャパン(CCUJ)の設立

2020年7月に、次世代リーダー育成プログラム「コカ・コーラユニバーシティ ジャパン(CCUJ)」が設立されました。グローバル企業の強みを生かし、グローバルのリーダーシッププログラムや海外研修を実施し、海外の支社でも活躍できる人材の育成に取り組んでいます。国内の市場だけでなく、グローバル市場で生き残っていくための若手人材育成というのはコカ・コーラならではの視点ではないでしょうか。

 

若手社員の会合「ミレニアル・ボイス・ジャパン(MVJ)」の実施

出典:ESG Report2021 多様性の尊重

ミレニアル・ボイス・ジャパン(MVJ)とは、ミレニアル世代の有志社員を集め、コカ・コーラをよりよい会社にするための取り組みを経営者に提案するための会合です。単なる研修ではなく、ペットボトル製品によるプラスチックごみ問題解決のアイデアとして、AI付き空き容器回収ボックス「はらぺこベトベター」を開発するなど、実際の活動に直結する取り組みを行っています。

参照:ESG Report2021 多様性の尊重

 

持続可能なビジネスへのヒント

コカ・コーラのSDGsの取り組みに通底するのは、徹底した「リアリズム」です。SDGsとは決して高尚な「理想」ではなく、具体的な「目標」です。だからこそ、あくまで「本業」を通じて貢献するという軸からブレない。そしてそれは利益を追求する事業部内できちんと引き取って推進していく事こそ重要なのだと改めて感じさせられました。これはコカ・コーラの理念「本業を通じて社会課題を一歩一歩解決していく」が、最初に設定されていることも大きな意味を持っています。SDGs経営を、まさに推進している状態ともいえます。

また社員と地域が連携して地域に根差した地道な活動を継続していることも、企業としても地域に「根を張った」存在になっていくという意思を感じます。

改めて、コカ・コーラのSDGs取り組みにおける要点は以下5点になります。

  • 商品購入により顧客もSDGs活動に貢献できる仕組みにする
  • 掛け声ではなく「実績」でリードする
  • 対象の人員だけでなく、組織全員を啓蒙する
  • グローバル視点での人材育成を行う
  • 物品提供だけでなく、現地の人々と連携して推進する

「SDGsを何から始めていこう?」と悩んでいる企業の方は、まずは自社の本業とSDGsの関係性から「目標を再定義」し、理念やミッションを掲げることから始めてみてはいかがでしょうか。その上で、現実主義の視点で行動計画を「2030年まで」あるいは「2050年まで」という中長期のスケールで策定していきましょう。