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SDGsの目標12とは?「つくる責任 つかう責任」達成へのヒント

作成者: ツヅケル編集部|2022/09/08 4:20:05

人間が生活するためには、どうしても地球にある資源を利用しなくてはなりません。しかし現状では、生産された製品や食品の多くが使われることもなく廃棄処分されています。

そんな状況を受け、SDGsの目標12では「つくる責任 つかう責任」として、持続可能な資源の管理と効率的な利用をターゲットにしています。

本記事では、SDGsの目標12でのターゲットと達成のヒントを解説。マクドナルドや楽天などの企業の取組み事例についても併せて紹介していきます。ビジネスパーソンが目標12への取組みを考えるにあたって大切な要素をお伝えしますので、ぜひ内容をチェックしてみてください。

 

「ツヅケル」が注目したビジネスパーソンがSDGsの目標12を読み解くポイント

  • 「つくる責任 つかう責任」では資源を持続させるための取組みが必要
  • 大きな課題は3Rや食品ロスの問題

SDGsの目標12「つくる責任 つかう責任」の11のターゲット

 

SDGsの目標12「つくる責任 つかう責任」では、持続可能な消費と生産のパターンの推進が目標です。

この目標を実現するため、11個のターゲットが設定されています。

 

【SDGsの目標12.つくる責任 つかう責任の11のターゲット】

  • 12.1 開発途上国の開発状況や能力を勘案しつつ、持続可能な消費と生産に関する10年計画枠組み(10YFP)を実施し、先進国主導の下、すべての国々が対策を講じる。
  • 12.2 2030年までに天然資源の持続可能な管理及び効率的な利用を達成する。
  • 12.3 2030年までに小売・消費レベルにおける世界全体の一人当たりの食料の廃棄を半減させ、収穫後損失などの生産・サプライチェーンにおける食料の損失を減少させる。
  • 12.4 2020年までに、合意された国際的な枠組みに従い、製品ライフサイクルを通じ、環境上適正な化学物質やすべての廃棄物の管理を実現し、人の健康や環境への悪影響を最小化するため、化学物質や廃棄物の大気、水、土壌への放出を大幅に削減する。
  • 12.5 2030年までに、廃棄物の発生防止、削減、再生利用及び再利用により、廃棄物の発生を大幅に削減する。
  • 12.6 特に大企業や多国籍企業などの企業に対し、持続可能な取組みを導入し、持続可能性に関する情報を定期報告に盛り込むよう奨励する。
  • 12.7 国内の政策や優先事項に従って持続可能な公共調達の慣行を促進する。
  • 12.8 2030年までに、人々があらゆる場所において、持続可能な開発及び自然と調和したライフスタイルに関する情報と意識を持つようにする。
  • 12.a 開発途上国に対し、より持続可能な消費・生産形態の促進のための科学的・技術的能力の強化を支援する。
  • 12.b 雇用創出、地方の文化振興・産品販促につながる持続可能な観光業に対して持続可能な開発がもたらす影響を測定する手法を開発・導入する。
  • 12.c 開発途上国の特別なニーズや状況を十分考慮し、貧困層やコミュニティを保護する形で開発に関する悪影響を最小限に留めつつ、税制改正や、有害な補助金が存在する場合はその環境への影響を考慮してその段階的廃止などを通じ、各国の状況に応じて、市場のひずみを除去することで、浪費的な消費を奨励する、化石燃料に対する非効率な補助金を合理化する。

SDGsの目標12「つくる責任 つかう責任」では、特に「食品ロスの削減」「天然資源の管理」が大きな課題です。

11のターゲットは食品ロスの削減を実現するための具体的な対策が示されています。対策を考えるには、まず11のターゲットについて内容を抑えておきましょう。

 

出典:農林水産省「SDGsの目標とターゲット」

 

 

SDGsの目標12「つくる責任 つかう責任」が必要な理由

SDGsの目標12は、「地球の資源や人々の健康を守るために責任ある行動をする」が大きなテーマです。目標12が必要だと考えられる特に大きな理由を2つ紹介します。

  • 大量生産・大量消費を続けると地球の資源が枯渇する
  • 食品ロス問題が大きくなっている

それぞれについてチェックしていきましょう。

 

 

大量生産・大量消費を続けると地球の資源が枯渇する

 

 

現代の人間は、地球の生態系が1年間に生み出せるよりも多くの資源を消費しています。

資源の枯渇に関連して覚えておきたいのが、「アース・オーバーシュート・デイ」です。アース・オーバーシュート・デイとは、現状の暮らしにより1年分の資源を使い切る日を意味する言葉です。世界的に見た2022年のアース・オーバーシュート・デイは7月28日。また日本単体で見ると5月6日でした。

 

 

1971年から2022年まで、アース・オーバーシュート・デイは早まる一方です。新型コロナウイルス感染拡大に伴い、2020年は世界的に多くの経済活動が停止し、CO2の排出削減や資源利用の減少し、少しだけスピードを緩めることができましたが、それでも生態系が再生するよりも早いスピードで、人間が資源を使っているのだと分かります。

地球の資源は限りがあるもの。

各企業が利益追求のために大量生産を続けている限り、大量消費の時代は終わりません。大量生産は利益にもつながりますが、莫大なエネルギーを使い、コストも必要です。

目標12への取組みは、大幅なコストカットも実現できます。さらに取組みを消費者にうまくアピールできると、自社のイメージアップや購買意欲の刺激にもつながるでしょう。

 

画像引用:Global Footprint Network|Earth Overshoot Day

出典:Earth Overshoot Day is August 22, more than three weeks later than last year 

出典:12.つくる責任、つかう責任 | SDGsクラブ - 日本ユニセフ

 

食品ロス問題が大きくなっている

「生産者・消費者ともに資源に対する取組みが必要」だとしているのが目標12です。そのなかでも、特に食品ロス問題は大きく取り扱われています。世界全体で見ると、生産される食料のうち3分の1が廃棄処分されているのが現状です。

 

【食材別の廃棄処分される割合】

  • イモ類……45%
  • 魚介類……35%
  • 穀類……30%
  • 乳製品……20%
  • 肉類……20%

平成27年1月、日本の環境省では、学校給食から発生する食品ロスの状況について調査を行いました。その結果として児童1人あたり年間17.2キロの食品廃棄物が発生しているとの結果が出ています。給食による食品廃棄物はリサイクルも行われていますが、38%は焼却処分されているのです。

食料自給率が低い日本での食品ロスは、輸入・廃棄など多くの部分で無駄を発生させています。しかも多くの食料が廃棄されている現状でありながら、貧困による食糧不足で苦しむ子どもが少なくありません。

世界では飢餓に苦しむ人口が8億人を超えている一方で、生産された食料の3分の1を廃棄している現代社会。まずはこの明らかな矛盾を解消しないことには、他のあらゆる努力は無意味なものになるでしょう。

 

出典:12.つくる責任、つかう責任 | SDGsクラブ - 日本ユニセフ

出典:学校給食から発生する食品ロス等の状況に関する調査結果について|環境省

 

 

持続可能な消費と生産を達成するための日本政府の取組み

SDGsの目標12では、持続可能な消費と生産への取組みが求められます。

そのために日本政府が行っている代表的な取組みが、以下の2つです。

  • 倫理的消費の普及啓発
  • 消費者志向経営の推進

それぞれの取組みについて確認していきましょう。

 

日本のSDGs取組み事例①倫理的消費の普及啓発

日本政府では、SDGsの目標12に対し、倫理的消費の普及啓発活動を行っています。「エシカル消費」とも呼ばれるのが倫理的消費です。倫理的消費とは、地球環境・人・社会・地域に配慮した消費行動を意味します。以下に一例をあげました。

  • フェアトレード(社会)
  • オーガニック(環境)
  • 地産地消(地域)
  • リサイクル(環境)
  • 障害者支援につながる商品(人)

消費者庁では、倫理的消費の必要性や考え方を普及するためのシンポジウム「エシカル・ラボ」を各地で開催。エシカル・ラボでは、倫理的消費の先進取組み事例の紹介などを行っています。

日本では「大量生産・大量消費」の時代が長く続いていました。その状況を変えるのは、決して簡単なものではありません。事業者・消費者双方の意識改革が求められます。政府は倫理的消費を浸透させていくために、今後も事業者・消費者への積極的なアプローチが必要となるでしょう。

 

参照:国連ハイレベル政治フォーラム報告書~日本の持続可能な開発目標(SDGs)の実施について~ 

参照:「エシカル・ラボ」|消費者庁

 

日本のSDGs取組み事例②消費者志向経営の推進

倫理的消費を推進するために、政府では事業者に対する消費者志向経営の推進活動も開始しています。「国連ハイレベル政治フォーラム報告書」によると、消費者志向経営とは以下のようなものです。

 

事業者が、消費者全体の視点に立ち、健全な市場の担い手として、消費者の信頼を獲得するとともに、持続可能で望ましい社会の構築に向けて、社会的責任を自覚して事業活動を行うこと

(引用:国連ハイレベル政治フォーラム報告書~日本の持続可能な開発目標(SDGs)の実施について~)

 

消費者志向経営の普及を図るため、政府は2016年に消費者庁を中心に消費者志向推進組織を発足。

事業者に対し「消費者志向自主宣言・フォローアップ活動」への参加を呼びかけるほか、経営者層向けセミナーなどを開催しています。

 

参照:消費者志向自主宣言・フォローアップ活動 参加事業者及び取組内容|消費者庁

 

 

限りある資源を守るためにできること

限りある地球の資源を守るためにできることの1つに「3R」が挙げられます。3Rとは以下の3つです。

  • Reduce……減らす
  • Reuse……繰り返し使う
  • Recycle……再資源化する

Reduceとは、製品を作るときに使う資源の量を減らしたり、廃棄物の量を減らしたりすることです。耐久性の高い製品を選んで使う・メンテナンスで製品を長持ちさせる・レンタルやシェアを活用するなどが考えられるでしょう。

Reuseとは使用済みの製品を繰り返し使うことを意味します。フリーマーケットやオークションの活用・リターナブル容器に入った製品の利用などがReuseにあたるものです。

Recycleとは、廃棄物を資源として利用することをいいます。ごみの分別回収・リサイクル製品の購入や使用などが挙げられるでしょう。

 

環境庁の「令和元年版 環境・循環型社会・生物多様性白書」によると、2010年以降は全体的な3Rの認知度や廃棄物への配慮は減少傾向です。一方、循環型社会形成への移行に肯定的な割合は8割に達し、レンタルやシェア、不用品の売却をする人も増加しています。

 

資源を守るという観点から考えると、企業が望まずとも大量消費の時代は終わらせなくてはなりません。なぜなら企業の事業活動では、エネルギーの消費・廃棄物の排出など、環境への負荷が生じるからです。持続可能な社会を目指すなら、現在よりも少ない資源やエネルギーで商品やサービスを生み出していかなければならないでしょう。

近年認知度が下がりつつある3Rですが、ライフスタイルとして定着させている人もいます。

企業の生産活動というのは消費者のニーズに合わせて行われるもの。よって、まず変えるべきは企業活動ではなく、買い手の意識です。SDGsへの理解が徐々に浸透する中、3Rに配慮した製品を購入することが「心地いいこと」と感じる買い手は今後どんどん増加していきます。持続的に売れ続ける定番商品を作るなら、買い手の意識が今どこに向かっているかを捉える必要があり、それにはSDGsへの基本的な理解が欠かせません。

 

出典:令和元年版 環境・循環型社会・生物多様性白書|環境省

出典:3Rとは|リデュース・リユース・リサイクル推進協議会

 

 

SDGsの目標12に基づく企業の取組み事例

SDGsの目標12「つくる責任 つかう責任」は、企業にとっては比較的取組みやすい内容でしょう。実際に企業が取組んでいる事例について紹介します。

それぞれについて内容を確認していきましょう。

 

 

マクドナルドの取組み事例:おもちゃリサイクル

アメリカに本社を置く世界的なファストフードチェーンである日本マクドナルド株式会社(以下マクドナルド)は、SDGsの目標12につながる取組みとして、「おもちゃリサイクル」を実施。おもちゃリサイクルは、2018年に発表された「プラスチック資源循環アクション宣言」の一環です。

子どもたちに人気の「ハッピーセット🄬」につくおもちゃは、成長につれて遊ぶ機会が減ります。そこでマクドナルドは、全国の店舗に「おもちゃ回収ボックス」を設置してリサイクル活動を始めたのです。

2021年には約305万個のおもちゃが回収され、店内で使われているプラスチックトレイに生まれ変わりました。おもちゃ回収ボックスの利用のためにマクドナルドに足を運ぶ利用者もいます。

マクドナルドの事例では、経費削減だけでなく、子どもがリサイクルに取組む機会を提供し売上アップにも貢献しています。

「つくる責任 つかう責任」は、企業にとっては比較的取組みやすい目標です。廃棄物を減らすだけでも、企業にとってメリットはあるでしょう。しかしマクドナルドのように利用者を巻き込んだ形で推進すると、さらに大きな効果に期待できます。持続可能な取組みを考えるにあたって、マクドナルドの事例を参考にしてみるのも良いでしょう。

 

写真(Patcharaporn Puttipon2465/ Shutterstock.com)

 

 

 

楽天の取組み事例:SDGs専門モールの開設

インターネットショッピングモールである「楽天市場」やフリマアプリ「ラクマ」などを運営する、インターネット関連事業を展開する楽天グループ株式会社(以下楽天)では2018年11月にSDGs専門モール「EARTH MALL with Rakuten」をプレオープン。

「EARTH MALL with Rakuten」では、国際機関の認証を取得した商品や、原料・製造段階から環境および社会に配慮した商品のみを紹介しています。2020年の段階で取り扱い商品数は3万点以上。具体的な売り上げ金額は公表されていませんが、モールの来訪者や売り上げは拡大しているとのこと。

「EARTH MALL with Rakuten」は、本業を軸としたSDGsへの取組み事例の1つ。自社だけでなく、他社とのつながりも強固になるのが大きなメリットだと考えられます。社会的に必要だからSDGsに取り組むのでは、どうしても受け身になってしまう可能性があります。しかし本業に絡めたうえで他社との協業で展開をすることで、ビジネスの基盤をさらに強固にしていけるでしょう。

業種によっては他社との協業が難しい可能性もありますが、参考として使える事例です。

 

写真(Sergei Elagin / Shutterstock.com)

 

 

 

無印良品の取組み事例:SDGs/ESG特化型店舗「MUJI 新宿」

株式会社良品計画によるライフスタイルブランドである「無印良品」は、家具・衣料品・雑貨・食品などの一般に知られているプロダクトの開発や販売だけでなく、カフェやホテルなど生活の基盤となる「場」づくりも手がけています

2021年9月、無印良品は「MUJI 新宿」および「無印良品 新宿」をリニューアルオープン。このうちSDGsやESGに特化しているのが「MUJI 新宿」です。リサイクルやリユースを意識した「MUJI 新宿」は、目標12「つくる責任 つかう責任」に該当します。

「MUJI 新宿」では1階に日本国内最大規模の「ReMUJI」のコーナーを設置。「ReMUJI」とは、2010年から無印良品が取組みを続けているプロジェクトで、利用客が着用した衣類を回収して再商品化するというものです。染め直しや洗い直しをした服が、リーズナブルな価格で販売されています。

店舗の詳細な内容についての情報は、オウンドメディア内にある「MUJI NEWS」でも大きく取り上げられました。

世界的に見ると、日本のSDGs取組みはまだ改善の余地があります。そんななかで「MUJI 新宿」は、SDGsへの認識を浸透させられるうえに、楽しみながら参加できる仕組みです。自社でSGDsの目標を考えるにあたって迷っているのなら、業種によっては「MUJI 新宿」のようなアプローチもできるでしょう。

 

 

参照:「MUJI 新宿」「無印良品 新宿」リニューアルオープンしました

参照:MUJI NEWS 

写真(Sorbis / Shutterstock.com

 

 

SDGsの目標12達成のために企業ができること

SDGsの目標12「つくる責任 つかう責任」では、限りある資源を持続するためのターゲットが定められています。実現にあたって特に重要となるのは、以下の2つです。

  • 資源の消費を抑える
  • 食品ロスを減らす

自社の活動が商品や食品の製造・販売とつながるなら、3Rや食品ロスの削減と絡めると取組みやすいのが目標12です。製造業や販売業以外でも、まったくエネルギーを使わずに事業を進めている企業は少ないはず。そこで本業の発展にも寄与する策を生み出すのが理想的であるといえます。

たとえば他社との協業を実現させれば相乗効果にも期待できるでしょう。他の生産者や消費者を巻き込む形で推進できれば、大きな効果を生み出せるのが目標12です。

自社のSDGs活動に他社や消費者を巻き込むことは、様々なステークホルダーが自社のSDGsへの取組みをリアルに「参加・体験」することになります。単なるコストカットや合理化という目に見える効果だけでなく、こうした体験を通した本質的なブランド価値の構築という目に見えない価値の方が実は大きいのかもしれません。

単なる廃棄物の削減にならない策を検討してみてはいかがでしょうか。

 

 

 

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