マクドナルドのSDGs取組みとは?世界的企業が挑む「物流」「サプライチェーン」の細かな見直し

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    日本マクドナルド株式会社(以下マクドナルド)は、アメリカに本社を置く世界的なファストフードチェーンです。2022年1月時点での国内店舗数は2,942件。主力商品のハンバーガー以外も含め、限定商品も豊富に展開しています。

    私たちにとって身近な存在であるマクドナルドでは、「SDGs(持続可能な開発目標)」についてどのような取組みを行っているのでしょうか。

    実際の事例を交えながら、マクドナルドの「SDGs」についてお伝えします。

    写真(8th.creator/Shutterstock.com)

     

    【Pick UP】「ツヅケル」が注目したマクドナルドのSDGs取組みのポイント

    • 主軸事業の大胆な改革を通じて、実効性の高いSDGsを推進していること
    • グローバル規模の物流ネットワークの最適化を進めていること
    • 食材の原材料や建築資材の一つひとつに至るまで緻密な見直しを行っていること

    マクドナルドのSDGs取組み方針

    出典:マクドナルドとSDGs

    マクドナルドでは、自社のビジネスが「すべてのSDGsの目標達成に貢献できる」との考えを持っていることを明らかにしています。そのうえで持続可能な社会にむけた17ある目標のうち6つに対し、重点的な取り組みを実施。

    • 目標2 飢餓をゼロに
    • 目標8 働きがいも 経済成長も
    • 目標12 つくる責任 つかう責任
    • 目標13 気候変動に具体的な対策を
    • 目標15 陸の豊かさも守ろう
    • 目標17 パートナーシップで目標を達成しよう

    そこで本記事では、マクドナルドが重点的に取り組んでいる6つの目標について、具体的な取り組み事例をご紹介いたします。

    オウンドメディアでSDGsの取り組みを発信

    参照・出典:サステナビリティ

    マクドナルドでは公式サイト内に「サステナビリティ」ページを設置。

    「重点的に取り組む領域・スマイルストーリー・私たちの取り組み」などの項目で、実際の取り組み事例について、写真を交えながら簡潔に紹介しています。新着情報は「News」として紹介。新たな取り組みについても周知しています。

    参照:マクドナルドとSDGs  

     

    マクドナルドのSDGs取組み事例①:ビーフ 牛の健康福祉と農家支援

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    マクドナルドでは、牛の健康福祉を保護し、農家を支援する取り組みも行っています。該当するのはSDGsの目標2「飢餓をゼロに」目標12「つくる責任 つかう責任」などの5項目です。

    マクドナルドといえば、やはりハンバーガー。そしてハンバーガーの多くに使用されているのがビーフパティです。毎日大量のビーフパティを使用するマクドナルドならば、健全な牛の飼育やビーフパティの生産・調達は大きな課題でしょう。

    その他、ポテトを揚げるパーム油をRSPO認証のものへ切り替えたり、水産資源保護のためにMSC認証を取得した魚を使用したり。また店舗で提供するコーヒーも全てレインフォレスト・アライアンス認証を取得した農園のコーヒー豆を使用しています。

    マクドナルドでは、グローバル基準で3つの取り組みを実施しています。

    • BSEファイヤーウォール……安全な牛肉を使用するための監査
    • 牛のストレスや苦痛の排除……と畜方法が適切かの管理
    • 加工プロセスのチェック……汚染リスクや異物混入などを排除するための管理

    基準が明確になると農家でも管理がしやすくなります。ビーフの安全性は、そのままマクドナルドの信頼性にも直結する要素。独自の基準を設けての農家支援は、マクドナルドの事業を持続するうえでも重要だと考えられます。パートナーシップにより双方が持続できる状態を目指すのは、SDGsにおいても理想的な状況であるといえます。

    参照:ビーフ 牛の健康福祉と農家支援 

     

    マクドナルドのSDGs取組み事例②:配送業務の効率化で省エネ

    マクドナルドは、HAVIサプライチェーン・ソリューションズ・ジャパン合同会社および株式会社富士エコーと連携し、配送業務の効率化による省力化・効率化・環境負荷低減に取り組んでいます。

    また店舗で使う包装材の輸送をトラックから鉄道輸送に切り替えたり、読売新聞と連携して関西地区で食塩と新聞夕刊を共同で輸送することで効率化を図り、年間約230台分のトラック運行を削減するなどの取組みを実施。

    この取り組みは、SDGsの以下3つの目標に関連するものです。

    • 目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」
    • 目標13「気候変動に具体的な対策を」
    • 目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」

    取組みによるCO2排出削減量は年間約481t-CO2。さらに年間約42,000時間の運転時間が削減される見込みです。この取組みは、令和元年度のグリーン物流パートナーシップ会議で「特別賞」を受賞。さらに2019年度ロジスティクス大賞では「業務改革賞」を受賞しています。

     

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    出典:日本マクドナルド株式会社が、令和元年度グリーン物流パートナーシップ会議「特別賞」を受賞

    マクドナルドでは、配送スケジュールや納品体系の見直しなどで業務効率化を推進しました。その結果としてCO2排出量の大幅な削減にも貢献しています。人件費や配送費を削減できるうえに環境への配慮も実現できています。どこからSDGsに手をつけるべきか迷う企業にとっては、ロールモデルとして使える事例だといえるでしょう。

    参照:配送業務の効率化で省エネ

     

    マクドナルドのSDGs取組み事例③:食品リサイクル

    2022-05-25 (2)出典:食品リサイクル

    食品リサイクルは、SDGsの目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」・目標12「つくる責任 つかう責任」などに関連するマクドナルドの取り組みです。具体的には、2022年1月の段階で、以下のような食品がリサイクルされています。

    • フライオイル……鶏の配合飼料として全店でほぼ100パーセントリサイクル
    • コーヒー豆かす……たい肥として姫路市内の11店舗でリサイクル
    • ポテトあげかす……飼料として大阪府内の36店舗でリサイクル

    コーヒー豆かすは2016年から循環型の取り組みとして回収が始められました。回収されたコーヒー豆かすはリサイクル工場でたい肥として再資源化。このたい肥を使い、香川県の農家がレタスを育てています。レタスは収穫後に関東エリアの店舗で、商品として提供されているという状況です。

    限りある資源を効率的に利用するのが、循環型社会。コーヒー豆かすのリサイクルは、循環型社会の促進にあたっての好事例です。食品を取り扱う会社にとって、モデルとなる仕組みであるといえるでしょう。

    参照:食品リサイクル

     

    マクドナルドのSDGs取組み事例④:店舗の消費電力効率化による省エネ

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    マクドナルドでは、店舗の消費電力効率化による省エネを進めています。この取り組みは、SDGsの目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」や目標13「気候変動に具体的な対策を」に該当するものです。具体的な取り組みは以下の3つ。

    • プランドメンテナンスシステム
    • 設備機器のON/OFF管理
    • LED照明/デマンド監視装置

    プランドメンテナンスシステムとは、店舗の機器の点検や清掃を定期的に従業員が行うというもの。定期的なメンテナンスにより、機械効率を維持するのが目的です。

    また色分けされたドットシールで、店舗の機器や照明類の電源を管理。季節・営業時間・営業内容で電源の管理をして、無駄な電力使用を抑えています。

    さらに店舗改装時や入れ替え時にはLED照明を導入し、リアルタイムで使用電力を測定。一定量を超えると警報が鳴る装置を導入することで電力使用を抑制しています。

    これらの取り組みにより、マクドナルドは第5回「食品産業もったいない大賞」で、審査委員会委員長賞を受賞しました。電力消費量の抑制は、経費削減にもつながる取り組みです。SDGsに絡めた経費削減を考えているのなら、マクドナルドの消費電力効率化は参考として生かせます。

    参照:店舗の消費電力効率化で省エネ

    写真(Nixx Photography / Shutterstock.com)

     

    マクドナルドのSDGs取組み事例⑤:働きがいをすべての人に

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    出典:ハンバーガー大学

    2,900店舗以上を有するマクドナルドで働くのは、約17万人のクルーです。マクドナルドでは、クルーが「働きがい」を持って働ける仕組みづくりを以前から行っています。この取り組みはSDGsの目標5「ジェンダー平等を実現しよう」、目標8「働きがいも経済成長も」、目標10「人や国の不平等をなくそう」、目標17「パートナーシップで目標を達成しようなどに関連するものです。

    マクドナルドでは、プレミアムエイジと呼ばれるシニアクルーだけでなく、学生・主婦・外国人・障がい者など、幅広い人々が働いています。マクドナルドには定年がなく、2021年7月時点でのクルー最高齢は92歳。高校生から90代までがともに働ける環境ですが、シニア用に仕事を用意しているわけではありません。

    マクドナルドでは週に1回2時間からでもシフトに入れるため、ライフスタイルに合わせた勤務が可能。基本の業務は同じで、それぞれに合ったシフトや役割が持てるように工夫されています。

    さらにリーダーシップを学ぶために「ハンバーガー大学」という社内教育機関大学を設置。働く人が学び、成長し続けられる環境が整えられています。

    性別や年齢を問わず同じ仕事ができる環境は少ないもの。これは不平等をなくす、という目標に沿った取り組みであるといえます。

    参照:働きがいをすべての人に

     

    マクドナルドのSDGs取組み事例⑥:食育支援

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    マクドナルドでは、子どもたちを対象とする食育支援に取り組んでいます。食育支援活動は、SDGsの目標2「飢餓をゼロに」、目標4「質の高い教育をみんなに」、目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」の3つにつながるものです。

    マクドナルドは2005年、小学校での食育授業支援を目的とした「食育の時間」を開発しました。その教材を2019年春に、アニメやアプリを楽しみつつ学べる「食育の時間+(プラス)」としてリニューアルしたのです。

    教材を提供するだけでなく、食育授業支援事務局を設置して学校での食育授業をサポート。未来を担う子どもたちが、食についての正しい知識と習慣を身につけるための取り組みを継続して行っています。

    さらにマクドナルドでは、子どもたちを対象とした「おもちゃリサイクル」も実施。おもちゃリサイクルは、SDGsの目標12「つくる責任 つかう責任」などに関連するものです。

    おもちゃがつく「ハッピーセット🄬」は、家族連れの利用が多いマクドナルドでも高い人気を誇るもの。しかし子どもの成長につれ、おもちゃで遊ぶ機会は減っていきます。そこで、マクドナルドでは全国の店舗に、おもちゃ回収ボックスを設置したのです。

    2021年に回収されたおもちゃは、約305万個。店頭で回収されたおもちゃは、マクドナルドで使われているプラスチックの商品トレイにリサイクルされます。子どもにとっては、リサイクルを学ぶ貴重な機会であり、親子でリサイクルを考えるきっかけに生かせるでしょう。

    子どもたちが食育やリサイクルへの正しい知識を身につけるのは、未来社会に向けた重要な取り組みでしょう。さらに将来の顧客と成り得る子どもたちと、食育を通して深く関わり合うことで、自社の強い印象付けにもつながります。

    参照:食育支援

    写真(Patcharaporn Puttipon2465/ Shutterstock.com)

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    これまでの活動を生かすマクドナルドからのヒント

    マクドナルドでは、マテリアリティを決めた以外には、SDGsによる新たな取り組みはしていません。また社内体制の変更もなかったとしています。なぜなら、従前からマクドナルドは食品ロスの削減や地域社会への貢献など多くの取り組みを行っていて、それがSDGsにも結び付いているからです。

    SDGsだからといって特段新しい取り組みを始める必要があるとは限りません。自社のSDGs活動方針や取り組みなどで迷う部分があるのなら、これまでの活動に生かせる要素がないか、探ってみるのも良いでしょう。

    マクドナルドの取り組みは「今までの活動を継続してSDGsの観点から深めていくのも方法の1つ」だと教えてくれます。特に既存事業の主軸であるサプライチェーンを改革しているところに注目すべきです。付帯的に取り組むよりも難易度は上がりますが、本業であるぶん取り組みの実効性は段違いです。

    また世界的な企業であるからこそ、グローバル視点での原材料調達の最適化が可能であり、率先してそれに着手している点。また何か一つの変更も全世界レベルに及ぶため難易度が上がるにも関わらず、ロジスティクス大賞の「業務改革賞」を受賞するまで徹底して取り組んでいる点は企業姿勢として見習うべき点が多いでしょう。

    ツヅケル編集部

    持続可能な社会を一緒に考えるニュースサイト「ツヅケル」の編集部です。これからの環境・食糧・気候問題等をビジネス側から思考し、みんなで克服し、より豊かで幸せな毎日が送れる方法を探すための情報を日々キャッチし発信しています。

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