ESG経営とは?SDGsとの違いやメリット、企業の取組みを徹底解説!

    企業や個人のSDGsへの意識の高まりに伴って注目を集めているのが「ESG経営」です。持続可能な経営をするためには、ESG経営が欠かせません。

    企業価値の向上につながるESG経営への理解は、これからの時代を生き抜くために大切です。この記事では「ESG経営」を解説するとともに、メリットや課題、企業の取組みまで分かりやすくお伝えします。自社のESG経営に生かせるポイントが見つかるはずです。

     

     

    【Pick UP】「ツヅケル」が注目したESG経営のポイント

    • ESG経営とは、企業の経済成長だけではなく環境や社会へ配慮した経営
    • 従業員と共通理解を図るために具体的な数値目標を設ける
    • ESG経営の説明において、根拠となる数値データを提示する
    • 自社完結型の取組みではなく、さまざまな団体と連携する
    • 目先ではなく長期的な視点が企業価値を上げる鍵

     

    ESG経営とは?

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    そもそも、ESGとは「Environment(環境)」「Social(社会)「Governance(ガバナンス(企業統治)」の略称で、投資活動から始まった概念です。この3点を考慮した投資活動や経営・事業活動を表します。

     

    ESG経営は、一般に企業の経済成長だけではなく、環境や社会への配慮なども加味し、中長期的なリターンを目指す経営のことです。

     

    出典:内閣府| 令和2年度障害者差別の解消の推進に関する国内外の取組状況調査報告書

    参照:GSIA「Global Sustainable Investment Review 2020」

     

     

    ESG経営が注目される背景

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    近年では、企業経営においてもESGに配慮する傾向が強まっています。ESGの考え方は、経営や投資など幅広く広がっているのです。とはいえ、どうして、ESG経営が注目されているのでしょうか。

     

    その理由の一つが「SDGs」です。企業においてSDGsをどれだけ企業経営に取り込み、ESG投資を呼び込むかは、持続的な企業価値の向上の観点から見逃せません。

     

    日本企業は古くから社会課題を捉えて現在の成長を実現してきました。「会社が世のため人のために存在する」という考え方は「三方よし」や渋沢栄一の道徳経済合一説にも記されています。今後、世界でも通用する企業になるためにも、日本企業としての強みを生かしながら、ESG経営を強めていく必要があるのではないでしょうか。

     

    出典:経済産業省|SDGs経営/ESG投資研究会報告書




    ESGとSDGsのちがい

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    とはいうものの、「ESG」によく似た言葉である「SDGs」とは具体的にどのような違いがあるのでしょうか。

     

    SDGsとは、「Sustainable Development Goals(持続可能な開発⽬標)」の略称。環境、経済、社会の3つの柱が基盤になっています。「誰一人取り残さない」という理念を軸とした世界共通の目標です。

     

    一方、ESGの対象は主に企業がメイン。環境保護や持続可能な社会の実現、企業統治を目指したものです。つまり、ESGとSDGsは、社会や環境に配慮したものである点は共通しています。しかし、SDGsは地球に住むすべての人に関係しているが、ESGは企業の経営に特化したものです。つまり、対象が大きく異なっているといえるでしょう。

     

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    さらに、SDGsは目標であってESG投資を重視したESG経営は手段である点も大きな違いといえるでしょう。SDGsの目標達成のために、ESG経営に努めることが必要なのです。

     

    画像引用:内閣府|2018.10.18内閣府消費者委員会ヒアリング

    出典:経済産業省|SDGs 経営/ESG 投資研究会報告書

     

     

    ESG経営のメリット

    どうして、企業がESG経営をする必要があるのでしょうか。以下に、ESG経営のメリットを下記のように3つまとめました。

    ①新たな市場拡大

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    一つ目は、新たな市場拡大です。国連開発計画(UNDP)の調査によると、SDGsの目標達成に向けて、世界では「年間5〜7兆ドル」の資金が必要。投資機会は途上国で1〜2兆ドル、先進国でも最低1.2 兆ドルにのぼると試算されています。

     

    もし、SDGsが達成されれば、労働生産性の向上や環境負荷低減などに配慮した経済効果が生じるでしょう。その結果、2030年までに年間 12 兆ドルの新たな市場機会が生まれる可能性があるとも考えられています。

     

    つまり、ESG経営は長期的な市場拡大を視野に入れた企業にとって欠かせないといえるのではないでしょうか。

     

    出典:経済産業省|SDGs 経営/ESG 投資研究会報告書

     

     

    ②リスク回避

    ESG経営は、企業のリスク回避に大きく貢献します。世界全体がSDGsの達成を目指す時代の中、社会や環境への配慮を無o.jp/press/2019/06/20190628007/20190628007_01.pdf視して事業活動を行うことは経営危機につながりかねません。

     

    ・企業の評判が下がる

    ・消費者が商品を購入しくれなくなる

    ・市場拡大をしづらくなる

     

    逆に、SDGs事業に取り組むことは企業の持続可能性を強めるとともに、新たな市場拡大へのチャンスを獲得できます。長期的な経営リスクを回避するためにできることが、ESG経営なのです。

     

     

    ③資金調達

    SDGs_elearning2ESG経営をすることは、安定した資金調達にもつながります。社会や環境に配慮した経営をすることで、結果として投資家からの評価が高まるからです。

     

    ESGを推進する国連責任投資原則(PRI)の署名機関は年々増加傾向です。2019 年3月時点では、運用規模が85兆ドルを超えました。

     

    投資家が着目する点は、過去の実績だけではありません。将来の企業価値も重視しています。長期的な成長が期待できるかどうかを判断するために、ESG経営は大きな手がかりになるといえるでしょう。持続可能性に対する人々の意識の高まりは投資判断にも大きく影響しているのです。

     

    特に、欧州投資家はESGへの意識が高いです。「ESGを取り入れなければ、儲からない」と考えている割合が高まっています。企業が、気候変動や人権などに関する取組みを推進していくことは、投資家への強いアピールになるといえるでしょう。

     

    ESGやSDGsという世界的なフレームワークを用いることで、海外から日本企業へ資金が流入するという好循環が生まれることを期待できるのです。

     

    出典:経済産業省|SDGs 経営/ESG 投資研究会報告書



     

    ESG経営の企業課題

    では、企業がESG経営をするためにどのような課題を克服する必要があるのでしょうか。ESG経営のデメリットにも触れながら、3つの企業課題をそれぞれ解説します。

     

    ①従業員との共通理解

    経営トップと従業員のベクトルを一体化できるのかが課題の一つ。従業員一人ひとりが「自分のやっているプロジェクトの目的は何か?」「SDGsの17目標のどれとどのようにつながっているのか」を認識している状態が理想です。

     

    ・統合報告書で自社の経営課題とSDGsを紐づける

    ・SDGsについて知識を深める研修を行う

    ・自社のESG経営の内容を誰が見てもわかるように明確化する

     

    以上のような経営陣と現場が共通理解できる取組みが欠かせません。自分たちの方向性を理解し、社会への貢献を実感できるようになれば、さらに企業のESG経営は加速するといえるでしょう。

     

     

    ②行政や他業界との連携

    ESG経営は、一企業だけで実現することが難しいというデメリットがあります。

    •  政府
    • 自治体
    • 地域
    • 他業界
    • 大学
    • 小中学校、高等学校
    • 消費者

     自社だけで完結するのではなく、行政や他業界との連携が必要不可欠です。社外へ輪を広げることで、イノベーションの可能性が高まるのではないでしょうか。

     

     

    ③長期的な視点をもつ

    ESG経営において、長期的な見通しや視点をもつことは欠かせません。環境や社会に配慮した事業には、短期的なリターンをすぐに望めないというデメリットがあるからです。

     

    しかし、企業が5年、10年、20年などの長期的な視点でESG経営することは、地域や社会に貢献でき、企業価値の向上を期待できます。ESG経営を前面に打ち出すことで、従業員のエンゲージメントを高めることも可能です。

     

    目先の利益にとらわれることなく、長期的な経営を目指していくことが企業の課題といえるでしょう。

     

    出典:経済産業省|SDGs 経営/ESG 投資研究会報告書



     

    ESG経営を実践!企業の取組み

    では、企業の事例はどのようにESG経営を実践しているのでしょうか。ESG経営に関する企業の取組みを紹介します。

     

    ①日本郵政

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    日本郵政グループは、持続可能な社会の構築に貢献する「協創プラットフォーム」を目指した事業を展開しています。

     

    日本郵政グループの強みは、全国2万4千の郵便局から預かった多額の金融資産。このリソースを、適切な企業統治のもとで、世界的な社会課題への解決に役立てています。

     

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    ・温室効果ガスを2030年度までに46%削減という目標を設定

    ・郵便局にEV(電気自動車)のための充電インフラを整備

    ・太陽光発電設備の設置によって災害時のレジリエンスの向上を進める

    ・ゆうちょ銀行やかんぽ生命保険の資金の一部を再生可能エネルギー分野に投資

    ・本社における女性管理者の比率を30%にする

     

    このようにESG目標を設定し具体的な取組みを実践していました。数値目標があることで、従業員とも共通理解しやすくなります。日本郵政グループの事例は、自社の強みを生かした地域密着型の見本といえるでしょう。

     

    画像引用:日本郵政

    出典・参照:日本郵政|サステナビリティ経営の推進

     

     

    ②キヤノン

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    キヤノンは技術力を生かした新たな価値創造、社会課題の解決、環境保護や保全活動で社会に貢献しています。

     

    環境に関する軸は「地球温暖化対策」「リサイクル」「有害物質排除」「生物多様性保全」。「豊かな生活と地球環境が両立する社会」の実現を目指しています。

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    例えば、回収したカートリッジのプラスチックをペレット化し再度原材料として使用しています。リサイクルも自社で行うことで、原材料調達、輸送で発生する二酸化炭素も大幅に削減することに成功しました。

     

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    社会に関する軸は以下のように多岐に渡ります。

    • 人権尊重
    • 雇用と処遇
    • ダイバーシティ&インクルージョンの推進
    • 労働安全衛生と健康経営
    • 人材育成・自己成長支援
    • 製品責任
    • 社会文化支援活動
    • サプライチェーンマネジメント
    • ステークホルダーエンゲージメント

    例えば、「ダイバーシティ&インクルージョンの推進」において、障害者の社会進出を支援。国連の「ノーマライゼーションの理念」を尊重し、キヤノンおよび国内グループ会社において、障がいのある方の採用を積極的に進めています。

     

    採用後は事業所ごとに差別禁止を徹底するとともに、個別面談を実施し、施設使用に関する配慮など合理的配慮の提供にも努めていました。

     

    また、企業統治の軸は「リスクマネジメント」「知的財産マネジメント」「ブランドマネジメント」の3つがメイン。継続的に企業価値を向上させていくためには、経営における透明性の向上を重視しています。

     

    このように、キヤノンのESG経営は

    • ESG経営を明確化する
    • 根拠となるデータを元に方針を説明する
    • 国際的な基準も参考にした取組みを実施する

    以上の点が徹底されていました。投資家へのアピールへのヒントになるのではないでしょうか。

     

    出典:キヤノン|キヤノンについて

    出典:キヤノン|サステナビリティ|環境

    出典:キヤノン|サステナビリティ

     

     

    ③花王

     

    花王のESG経営の特徴は次の3つです。

    1. 生活者の目線に立ったESG戦略
    2. さまざまなステークホルダーとの連携
    3. 社会的課題への取り組みを推進する強固なガバナンス体制

     

    特に注目すべき点は「2. さまざまなステークホルダーとの連携」です。

    • 地域社会
    • 行政
    • 自治体
    • NGO・NPO
    • 大学
    • 業界団体
    • 他企業

    自社で完結させるのではなく、さまざまな団体とパートナーシップを結んでいます。

     

    例えば、「プラスチック包装容器の資源循環の実現」に向けては「ライオン株式会社」と連携。フィルム容器のリサイクルに協働して取り組んでいます。

     

    また、持続可能なサプライチェーン構築を目指すために、パーム油製造・販売会社「アピカルグループ」と農園会社「アジアンアグリ」とも関係を築いていました。

    • インドネシアの小規模パーム農園の生産性向上
    • 持続可能なパーム油に対する認証の取得を支援

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    これらのプログラムを遂行するために、互いの知見やノウハウをかけ合わせ、自社だけでは成し得ない課題解決に励んでいるのです。花王の取組みは、ESG経営の課題の一つにある「パートナーシップ」を見事に活用した事例といえるでしょう。

     

    出典:花王|花王 コーポレート 花王のESGビジョン

    出典:花王| ESG経営

     



    持続可能なビジネスへのヒント

    ESG経営とは、目先の経済成長だけではなく、環境や社会への配慮なども重視した経営であることが分かりました。ESG経営には、すぐに成果が得られないというデメリットがあります。しかし、「市場拡大」「経営リスクの回避」「投資家へのアピール」が期待できるのが企業にとっての大きな魅力です。

    とはいうものの、自社のESG経営をどうすべきかと迷っている場合もあるでしょう。その際は、今回紹介した企業の取組みから成功のヒントを得てください。

    • 従業員と共通理解を図るために具体的な数値目標を設ける
    • ESG経営の説明において、根拠となる数値データを提示する
    • 自社完結型の取組みではなく、さまざまな団体と連携する

    まずは、以上のポイントを意識しながら、自社の強みを生かした目標設定やプログラムを検討してみてはいかがでしょうか。長期的な視点からESG経営をどれだけ推進できているかどうかが、将来の企業価値につながります。

     

     

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    ツヅケル編集部

    持続可能な社会を一緒に考えるニュースサイト「ツヅケル」の編集部です。これからの環境・食糧・気候問題等をビジネス側から思考し、みんなで克服し、より豊かで幸せな毎日が送れる方法を探すための情報を日々キャッチし発信しています。

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