日本フードエコロジーセンター は廃棄物処理業と飼料製造業の2面性をもつ新たなビジネスモデルを展開しています。第2回ジャパンSDGsアワードでは、SDGs推進本部長(内閣総理大臣)賞を受賞しました。
特に高く評価されているのが「リキッド発酵飼料」。これは、スーパーマーケットや百貨店などから回収した食品廃棄物をリサイクルして生産したものです。日本が抱える課題の一つである「食品ロス削減」に、本業を通して大きく貢献しているのです。現在飼料の高騰が叫ばれる中、ますます注目を集める日本フードエコロジーセンター は、今注目の「SDGs(持続可能な開発目標)」に対してどのような取組みを行っているのでしょうか。くわしくお伝えしていきます。
【Pick UP】「ツヅケル」が注目した日本フードエコロジーセンター のSDGs取組みのポイント
- 食品ロスや廃棄物を原料として活用する
- 自社ブランドを立ち上げて、持続性のあるリサイクル・ループを構築
- 個々の適性を生かしながら、障がい者を雇用する
- 積極的に地元の企業や高校とパートナーシップを結ぶ
- 自社の強みを生かした工場見学や勉強会を開催する
日本フードエコロジーセンターのSDGs取組み方針
まずは、飼料を生産する日本フードエコロジーセンターの事業背景からみていきましょう。
日本フードエコロジーセンターの事業は、主に2つの社会的問題が関わっています。一つ目が「ゴミ処理の問題解決」。二つ目が「畜産経営の問題解決」です。複数課題の問題解決を目指すことが、日本フードエコロジーセンターの事業の基盤になっています。
このように廃棄物処理業と飼料製造業の2側面を持つ新たなビジネスモデルを実現した日本フードエコロジーセンターの実績は政府やメディアからも高く評価されています。そして、2018年12月21日に第2回「ジャパンSDGsアワード 」SDGs推進本部長(内閣総理大臣)賞を受賞しました。
本記事では、日本フードエコロジーセンターがSDGsへの貢献として実施している事例を6つ紹介します。
【日本フードエコロジーセンターの6事例】
日本フードエコロジーセンター のSDGs取組み事例①:食品リサイクル・ループの構築
「飼料製造」を展開する日本フードエコロジーセンター は、自社の飼料を使用して飼養した豚肉をブランド化することで、持続性のあるリサイクルの仕組みを構築しました。
養豚事業や製造業、食品スーパーや百貨店などから、つくりすぎてしまったものや売れ残ってしまったものを回収し、殺菌・発酵させて、液体状の養豚用の飼料(リキッドフィード)を製造しています。このような循環型社会は、SDGsの目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」に貢献した見本といえるでしょう。
さらに注目すべき点は「食品ロス削減」。一日あたり「約35t」の食品ロスを食品循環資源として受け入れることで、廃棄物を減らすことに貢献しています。
- パンくず
- 米飯
- 牛乳
- 野菜、果物
- 生地のあまり
このような食材を180以上の食品関連事業から回収し、飼料の原料として活用しているのです。現在、国内の焼却炉で燃やされる廃棄物のうち半分が食品廃棄物といわれています。1tを燃やすために、約4〜5万円の税金がかかっているのです。
食品ロスの現状から考えても、日本フードエコロジーセンターは廃棄物削減や節税への解決に大きく貢献しているのが分かります。まさに、SDGsの目標12「つくる責任 つかう責任」を果たしている事例の一つ。自社の強みを生かして、食品ロスを減らす仕組みを構築するというロールモデルになるのではないでしょうか。
日本フードエコロジーセンターのSDGs取組み事例②:養豚場への安定した飼料提供
SDGsの目標12「つくる責任 つかう責任」に基づき、日本フードエコロジーセンターが手掛ける「リキッド発酵飼料」は、食品ロスから生産されています。原料は食品廃棄物とはいえ、非常に安全で良質です。
現在の物価高騰の原因の一つに「飼料用穀物の相場高騰」が背景にあるのはご存知の方も多いのではないでしょうか。飼料を輸入に頼りすぎてしまうと、養豚事業は価格変動に大きな影響を受けてしまいます。しかし、輸入飼料から「リキッド発酵飼料」に変えることで、穀物の相場を受けにくい畜産経営を支援できるのです。
その結果、飼料自給率の向上や食料安全保障への貢献につながります。SDGsの目標2「飢餓をゼロに」の達成にも近づくといえるでしょう。「当たりの前のように輸入しているものを自社で生産できるのではないか」という発想の転換は、他の事業でも大きなヒントになるのではないでしょうか。
出典:株式会社日本フードエコロジーセンター|食品廃棄物を飼料に
日本フードエコロジーセンターのSDGs取組み事例③:障がい者の就労支援
日本フードエコロジーセンターは就労支援として、障がい者を積極的に雇用しています。それぞれの障がいの特徴や個性に合わせて、業務を割り振ることで生産性をあげているそうです。例えば、以下のものです。
- パンと包装ビニールを分ける
- おにぎりなどの開封
障がいがあっても活躍できる労働環境の構築は、SDGsの目標8「働きがいも経済成長も」に大きく貢献しているといえるでしょう。
ただ障がい者や高齢者を雇用すればいいという問題ではありません。それぞれがやりがいを感じながら働ける環境が求められています。障がいがあることでハンデはありますが、その分長けているスキルもあります。個性に注目した業務提供は、雇用の多様性を実現させる大きなヒントといえるでしょう。
出典:株式会社日本フードエコロジーセンター|食品廃棄物を飼料に
日本フードエコロジーセンターのSDGs取組み事例④:小田急グループとのパートナーシップ
自社の飼料を用いてブランド豚を立ち上げた日本フードエコロジーセンターは、小田急グループと業務提供しています。「リキッド発酵飼料」で育成されたブランド豚肉は「優とん」。食品循環資源を活用した飼料で作られたエコな豚肉です。食感が柔らかく甘みがあるにも関わらず、コレステロール値が低いためヘルシーなのが特徴といえます。
この「優とん」を販売しているのが小田急グループ。「Odakyu OX」や「小田急百貨店」で購入可能です。
「ムダをなくす おいしさを生み出す」をモットーにする小田急グループと業務提供することで、自社の商品アピールだけではなく、健康な食事の輪を広げることも実現しました。つまり、SDGsの目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」、目標3「すべての人に健康と福祉を」に大きく貢献しているといます。
特に中小企業やベンチャー企業は、大手企業とパートナーシップを結ぶことで、貢献度が強まることが期待できます。今回の成功事例をぜひ参考にしてみてください。
日本フードエコロジーセンターのSDGs取組み事例⑤:神奈川県立中央農業高校への教育支援
食という強みを生かした社会貢献をしている日本フードエコロジーセンターは、SDGsの目標4「質の高い教育をみんなに」に基づき、次代を担う人材育成にも積極的に取り組んでいます。
神奈川県中央農業高校の養豚部が豚の飼育で利用しているのが「リキッド発酵飼料」。そこで育てられた豚は「ちゅのとん」という独自ブランド豚として販売され、お歳暮商品のハンバーグギフトセットも手がけています。
実は、この開発を支援したのが、日本フードエコロジーセンターへ食品循環資源を供給している高島屋及び利恵産業。生徒とともに、開発から販売をサポートしました。この取組みは、テレビや雑誌など多くのメディアでも取り上げられたそうです。
日本フードエコロジーセンターを中心に生まれた教育機会は、生徒たちにとって価値ある学びをもたらしたのではないでしょうか。
日本フードエコロジーセンターのSDGs取組み事例⑥:だれもが学べる場を提供
日本フードエコロジーセンターには、教育に関する取組みがもう一つあります。
それが「学びの提供」です。スタディツアー、親子見学会、消費者の勉強会などを毎週1~3回行っています。さらに、食品関連企業、農業生産者、メディア等々の見学も受け入れ、海外からの視察もあるそうです。それだけ注目が大きいといえるのではないでしょうか。
工場見学は一般の方も参加可能です。新型コロナウイルス感染拡大に伴い、原則として毎月の「第1金曜日」または「第3金曜日」の開催ですが、ホームページから簡単に申し込めます。内容は以下の通りです。
申し込みフォーム
https://japan-fec.co.jp/form/factory/
- 工場概要の説明(20~30分)
- 現場の作業風景を見学(20~30分)
- 質疑応答(20~30分)
また、工場では「リキッド発酵飼料」で育成したブランド豚肉「優とん」の加工品の販売もあります。見学料金は「大人:800円」「学生(小学生〜大学生):500円」。90分間でたっぷり学べる内容になっています。
自社工場がある場合は、工場見学や勉強会の提供をすることで、教育への貢献も可能となります。自社商品のアピールにもつながるので、一度検討してみてはいかがでしょうか。
日本フードエコロジーセンターに学ぶ持続可能なビジネスへのヒント
日本フードエコロジーセンター のSDGsの取組みは、「食品ロスを新たな価値に」という企業理念が基盤になっています。食品廃棄物を有効活用した「リキッド発酵飼料」を開発することで、安定した飼料提供と持続性のあるリサイクル・ループの構築を実現しました。
廃棄物処理業と飼料製造業の2面性をもつ新たなビジネスモデルを通じて貢献するという軸がブレないからこそ、健康や教育、雇用の多様性など社会貢献の輪が広がっていると考えられます。また、地元の企業や学校とパートナーシップを結ぶことで、地域に根ざした企業へと成長し、社会的信頼も高まることが期待できるでしょう。
SDGs事業をこれから始めようと悩んでいる企業の方は、まずは自社の本業とSDGsの関係性を洗い出してみてはいかがでしょうか。企業の強みを生かした軸を決めた上で、無理なくできる社会貢献の仕組みを構築することが大切といえます。
- 食品ロスや廃棄物を原料として活用する
- 自社ブランドを立ち上げて、持続性のあるリサイクル・ループを構築する
- 個々の適性を生かしながら、障がい者を雇用する
- 積極的に地元の企業や高校とパートナーシップを結ぶ
- 自社の強みを生かした工場見学や勉強会を開催する
以上の点は、特に大きなヒントになるのではないでしょうか。ぜひ参考にしてください。