
富士メガネは、北海道札幌市に本店を置く眼鏡・補聴器の専門店です。前身となる富士眼鏡商会が誕生したのは1939年の樺太でした。かねてより顧客サービスを重視するスタイルを貫いている企業です。
1983年には海外難民視力支援活動を開始し、現在も継続しています。
富士メガネの公式ホームページには、SDGs取組みに関する内容がほとんど掲載されていません。しかし取組み自体は高く評価され、SDGsアワードも受賞しています。
そんな富士メガネでのSDGs取組み6つの事例について、内容をチェックしていきましょう。
【富士メガネの6事例】
【Pick UP】「ツヅケル」が注目した富士メガネのSDGs取組みのポイント
- 国連機関との連携によるグローバルな社会貢献活動
- 被災地を対象とした国内支援活動
富士メガネのSDGs取組み事例①海外難民視力支援活動
富士メガネは、第3回ジャパンSDGsアワードにて、「SDGs副本部長(外務大臣)賞」を受賞しました。受賞につながった取組みの1つが、海外難民視力支援活動です。
富士メガネでは1983年から、毎年難民・国内避難民の居留地を訪問して視力検査を実施。そして一人ひとりに合った眼鏡を無償で提供しています。
海外難民視力支援活動は37回にも及び、これまで合計177,946組の眼鏡を提供しました。訪問地はタイ・ネパール・アルメニア・アゼルバイジャン・ タンザニアなどです。
この取組みは、SDGsでの以下の目標に該当します。
- 目標1 貧困をなくそう
- 目標3 すべての人に健康と福祉を
- 目標4 質の高い教育をみんなに
- 目標8 働きがいも経済成長も
- 目標17 パートナーシップで目標を達成しよう
視力支援は、もともと「創業45周年記念事業」として開始しました。SDGsが採択されるよりも遥か昔から続いてきた取組みです。社員の働きがい・ステークホルダーとの連携にもつながります。
海外難民視力支援活動は、ビジネスをグローバルな支援活動につなげた好事例です。何より素晴らしいのは、その継続力でしょう。どんな取組みも始めるより継続するのが難しいもの。自社でSDGs取組みを検討するのなら、富士メガネのように継続できる取組みがないか検討してみましょう。
参照:ジャパンSDGsアワード | JAPAN SDGs Action Platform | 外務省
富士メガネのSDGs取組み事例②UNHCRとの連携
富士メガネの海外難民視力支援活動は、UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)との連携とも密接に結びついている取組みです。SDGsが採択される前から続いているものの、目標17の「パートナーシップで目標を達成しよう」に該当します。
2006年10月、富士メガネ会長はUNHCRによる「ナンセン難民賞」を受賞しました。「ナンセン難民賞」は難民救済に貢献した個人または団体を称える賞です。賞金の10万ドルは指定する難民の救済にあてられます。そこで富士メガネ会長は、賞金でアゼルバイジャンの国内避難民居住区に地下水の給水施設を完成させました。
日本人および企業経営者で「ナンセン難民賞」を受賞したのは、富士メガネ会長が初となります。
- UNHCRへの寄付
- 「UNHCR WILL2LIVE ムーブメント」への特別協賛
- 全店舗に「国連難民募金箱」を設置
富士メガネではさまざまな形でUNHCRとの連携を行っています。
企業によっては、直接難民の居留地を訪問して支援を行うのは難しいでしょう。しかし訪問が難しくても連携や支援は可能です。UNHCRに限らず、国際的な組織と長く連携していく方法もあります。
写真(Ralf Liebhold / Shutterstock.com)
参照:UNHCR(ユーエヌエイチシーアール)とは? – UNHCR Japan
富士メガネのSDGs取組み事例③被災者支援
富士メガネは、2018年9月に発生した北海道胆振東部地震での被災者支援も行っています。
- 道内6か所の避難所を訪問して眼鏡142組を無償提供
- 避難所で眼鏡の調整・修理・補聴器電池を提供
- 罹災証明書持参者を対象に店頭で検眼を実施して新しい眼鏡を無償提供
- 罹災証明書持参者を対象に無償で眼鏡の調整・修理・補聴器電池を提供
被災者支援の取組みは2018年12月で終了しています。終了までに提供された眼鏡は3,232組です。
被災者支援の取組みは、目標3「すべての人に健康と福祉を」に該当します。現在も継続している取組みではないものの、国内支援活動もまた価値のある取組みです。
眼鏡の無償提供自体は企業の利益につながりません。しかし企業の知名度・信頼度を高められます。自然災害の多い日本では、今後も規模の大きい災害が起こり得ます。SDGsの取組みの1つとして国内での被災者支援を考えてみるのも良いでしょう。
富士メガネのSDGs取組み事例④学童・生徒支援
富士メガネでは、クリスマスプレゼントの形で、学童や生徒の支援も行っています。CSRレポートによると、代表的な取組み内容は以下の通りです。
- 学習支援を行う塾にお菓子をプレゼント(2016年~)
- 養護施設で暮らす子どもたちにお菓子をプレゼント(2017年~)
- ひとり親家庭への支援団体にお菓子をプレゼント(2018年~)
学童・生徒支援は、目標1「貧困をなくそう」や目標2「飢餓をゼロに」などに該当します。貧困や飢餓と聞くと、どうしても国外をイメージしがちです。しかし、日本国内でも経済的に厳しい環境で暮らしている人が大勢存在しています。
富士メガネによる支援は、ワンタイムではなく継続しているのが大きな特徴です。さらに支援する対象も徐々に広げています。
SDGsの取組みで、子どもたちに対する支援を考えている企業は多いでしょう。なぜなら取り掛かりやすく、社会的にも評価されやすい取組みだからです。しかし継続していくのは決して簡単ではありません。富士メガネの事例を参考に、長く続けられる取組みを考えてみてはいかがでしょうか。
富士メガネのSDGs取組み事例⑤店舗照明のLED化
全国に65店舗を有する富士メガネでは、環境への取組みとして毎年店舗更新時に照明のLED化を行っています。CSRレポートによるLED化の進捗状況は以下の通りです。
- 2016年……2店舗
- 2017年……3店舗
- 2018年……3店舗
- 2019年……3店舗
- 2020年……3店舗
- 2021年……2店舗
店舗照明のLED化はSDGsの目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」や目標13「気候変動に具体的な対策を」に該当します。
高効率照明であるLEDは、脱酸素社会の実現には必須となる設備です。政府でもLED照明への入れ替えを推進していますが、未だ普及率は高くありません。
普及率が低い理由として考えられるのがコストです。照明器具の形状が特殊なら、特注器具の製作が必要になるため、コストも時間もかかります。
それでも照明のLED化は、企業にとってコストダウンにつながる取組みです。1度にすべてを入れ替えようと考えると、負担の大きさから難しくなります。富士メガネのように、店舗更新や新設のタイミングでの入れ替えを検討してみましょう。
富士メガネのSDGs取組み事例⑥「ミーナの募金箱」設置
富士メガネでは、店頭および本社に「ミーナの募金箱」を設置しています。公益財団法人北海道盲導犬育成協会で、初めて育成された盲導犬が「ミーナ号」です。「ミーナの募金箱」で集められた募金は、盲導犬育成の貴重な財源になります。
富士メガネでは、集まった募金を公益財団法人北海道盲導犬育成協会に送金。2021年までに10回の送金が行われており、総額は2,806,842円にも上ります。
盲導犬は、目が見えない人や見えにくい人にとって頼れるパートナーです。視力や聴力のケアを行う富士メガネにとって、盲導犬は無関係な存在ではありません。
そのため富士メガネにとっては、本業とも大きくつながる取組みだと言えるでしょう。募金箱設置の取組みは、SDGsの目標3「すべての人に健康と福祉を」目標10「人や国の不平等をなくそう」などにつながります。
本業と関係性があったとしても直接的に取組むのが難しいなら、募金や援助といった形での参加も可能です。「できない」と諦めるのではなく、自社にできる取組みを模索してみましょう。
参照:ミーナの募金箱 | 公益財団法人北海道盲導犬協会公式ホームページ
地方企業でありながらグローバルな活動を行う富士メガネ
富士メガネは、地方企業でありながらもグローバルな活動を長く続けています。また海外難民だけでなく、国内での災害による被災者支援も行っているのが大きな特徴です。創業者、金井武雄氏の「モノが見えることで、人生を助けることもできる」という言葉通りに、社会貢献を続けてきました。眼鏡や技術の無償提供により、多くの人が救われています。地域貢献は従業員にとって、やりがいにつながる取組みです。
「グローバルな取組みは大企業だからこそ可能」と考える人も多いでしょう。そんな考えは思い込みに過ぎないのだと思わされるのが、富士メガネの取組みです。
企業の公式ホームページでは、SDGsの目標などについて触れていません。それでも長期にわたる取組みは高く評価され、ジャパンSDGsアワード受賞にもつながっています。
グローバルな取組みを考えるのなら、富士メガネの例も参考として検討してみてはいかがでしょうか。