HAKKI AFRICAは、ケニアのタクシードライバー向けに中古車マイクロファイナンス事業を展開しています。電子決済サービスの利用履歴などから判断した支払い能力を信用スコアとし、今までお金を借りられなかった労働者でも金融機関で融資を受けられるサービスを確立させたことが高く評価されています。
政府や大手企業からも大きな注目を集めるHAKKI AFRICA は、「SDGs(持続可能な開発目標)」に対してどのような取組みを行っているのでしょうか。くわしくお伝えしていきます。
【Pick UP】「ツヅケル」が注目したHAKKI AFRICA のSDGs取組みのポイント
- 新興国における融資の問題を解決するビジネスを立ち上げる
- ケニアのタクシードライバー向けに事業用自動車の購入資金の調達支援
- 最新テクノロジーを活用して、低コスト・低リスクを実現
- 信用スコアの改革のように、従来のやり方と方向性を大きく変える
- 積極的に高い専門性をもつ研究者や企業とパートナーシップを結ぶ
HAKKI AFRICAのSDGs取組み方針
まずは、HAKKI AFRICAの事業からみていきましょう。
HAKKI AFRICAは、2019年にアフリカのケニアを拠点にマイクロファイナンス事業で起業しました。マイクロファイナンスとは、貧困者向けの「小口金融」のこと。仕事のためにお金を借りられないアフリカの貧困層へお金を貸すことで、経済的自立を支援しているのです。
「誠実な努力が公平に報われる世界」というビジョンを胸に、金融とテクノロジーをかけ合わせた事業を通して、貧困の撲滅に取り組んでいます。
このようにアフリカで資金調達を支援するビジネスモデルを実現したHAKKI AFRICAの実績は政府やメディアからも高く評価されています。主な受賞歴は以下の通りです。
- 第5回ジャパンSDGsアワード受賞団体・副本部長(外務大臣)賞
- SMBC主催ピッチで最優秀賞
- 雑誌経済界「金の卵2021」で特別賞
- みんなの夢AWARD10でグランプリ
本記事では、HAKKI AFRICAがSDGsへの貢献として実施している事例を4つ紹介します。
【HAKKI AFRICAの4事例】
HAKKI AFRICA のSDGs取組み事例①:アフリカで金融サービス
2000年時点では約6.6億人だったサブサハラ・アフリカの人口は、2020年までに約11億人に達しました。2050年までに世界人口の4分の1を占める22億人にまで増加すると見込まれています。
人口増加に伴って、2000年に約4,200億ドルだったGDPは2022年には約5倍の2兆ドルへと成長。今後も高い成長率が期待されているのです。
しかし、2021年現在、アフリカをはじめとする新興国の約18億人は、金融サービスにアクセスができていないという現状があります。何故なら、預金を持たない国民が大半にもかかわらず、与信のとり方が、銀行の取引履歴やクレジットカードの利用状況を見るという、先進国に倣ったものしかなかったからです。
HAKKI AFRICAは、最先端の金融サービスを通して、生まれた地域の格差があっても成功できるという事例をアフリカにつくることを目指しています。
新興国の現状から考えても、HAKKI AFRICAは経済的な不平等への解決に大きく貢献しているのが分かります。まさに、SDGsの目標10「人や国の不平等をなくそう」を果たしている事例の一つ。自社の強みを生かして、平等な金融サービスを構築するというロールモデルになるのではないでしょうか。
出典:HAKKI AFRICA|NEWS|2.2億円の資金調達を実施しました
出典:信用スコアリングでアフリカの金融に革新を起こすHAKKI AFRICA|
出典:国際連合経済社会局|World Population Prospects 2019: Data Booklet
出典:International Monetary Fund|GDP, current prices
HAKKI AFRICAのSDGs取組み事例②:中古車ファイナンス
HAKKI AFRICAが手掛ける「中古車ファイナンス」は、ケニアのタクシードライバーが抱える課題を解決しています。
電車などの公共交通機関があまり整備されていないケニアでは、配車アプリのタクシーが急激に台数を伸ばしています。ドライバーとして働く人も増えていて、ナイロビ都市圏内だけでも12,000人ほど。ですがこのドライバーの7割以上は、自分の車を所有していません。毎月の稼ぎは、車のレンタル代、配車アプリのコミッション代、ガソリン代に消え、日々の生活費しか残りません。
車のレンタル代は年間で、中古車一台を所有できるほどの金額に及びます。車を所有すれば、レンタル代は必要なくなりますが、車を買うお金を銀行に借りることができないのです。何故なら貯蓄がない、あってもごくわずか。信用情報が不十分のためローンを組めず、レンタルせざるをえないケースが後をたちません。
そこでHAKKI AFRICAは、「新興国特化の独自信用スコアリング」をベースに、タクシードライバー向けの中古車マイクロファイナンス事業を開始。一般的に、信用スコアは年収や資産などが考慮されます。しかし、HAKKI AFRICAは電子決済サービスの利用履歴などから判断した支払い能力を与信としました。その結果、今まで融資を受けられなかった層でも金融機関で融資を受けられるようになったのです。
事業開始からわずか10ヶ月でローン申請総額は5.9億円を突破。2021年には営業黒字化しています。
このようにテクノロジーを用いたファイナンス事業を通して、「日々必死に働いても自分の車を持つことができない」という問題解決へ大きく貢献しました。タクシードライバーの経済的自立をサポートすることは、SDGsの目標8「働きがいも経済成長も」の達成にも近づくといえるでしょう。「今後経済成長が期待できるアフリカが抱える課題をビジネスチャンスに転換する」という発想は、他の事業でも大きなヒントになるのではないでしょうか。
出典:「Fintech Japan2021」スタートアップバトル優勝は、アフリカの信用スコアリング活用型中古車マイクロファイナンスHAKKI AFRICA
HAKKI AFRICAのSDGs取組み事例③:テクノロジーを駆使した事業展開
通常、与信サービスの立ち上げには金銭的にも時間的にも莫大なコストがかかります。
しかし、HAKKI AFRICAは、独自の信用スコアリングパスポートを始めとするフィンテックの活用によって、低コストの金融サービスを実現しました。フィンテックとは、ファイナンスとテクノロジーをかけ合わせた情報技術。スマートフォンによる送金がその一つです。
最新のテクノロジーを導入したことで、従来の金融機関より作業量を大幅に削減でき、地域内でも最安金利の金融サービスを届けることを可能にしました。
また、途上国のマイクロファイナンスを始めとする、小〜中規模の金融機関向けの「Credit as a ServiceのAPI(越境信用パスポート)開発」を主な事業としています。
信用スコアリングのアルゴリズムは非常に複雑ですが、先進国のエンジニアとマイクロファイナンス研究者の知見を通じ、数学的推論をアルゴリズム化することに成功。個人の信用を他国で使用できるパスポートとして提供できるようになったのです。
「開発途上国だから」「アフリカだから」と可能性を閉ざしてしまうことは簡単です。しかし、最新のテクノロジーを活用して未来の可能性を広げることは、先進国としての役割なのではないでしょうか。HAKKI AFRICAの事例は、SDGsの目標9「産業と技術革新の基盤を作ろう」に大きく貢献しています。社会問題と最新技術をかけ合わせてよりよい未来を作る大きなヒントといえるでしょう。
出典:PR times HAKKI AFRICA|ケニアの小口融資HAKKI AFRICAが急成長のタクシードライバー向け自動車ファイナンスを開始
HAKKI AFRICAのSDGs取組み事例④:通信事業シェアNo.1のSafaricom社とのパートナーシップ
通信事業シェアトップのSafaricom社が提供するモバイルマネーサービス「M-Pesa」のAPIを利用することで、返済自動記帳を可能にしました。これによって、他社が返済管理にかけるコストを10分の1程度まで削減。アフリカ金融サービス業界で地域最安金利を実現したのです。
特に中小企業やベンチャー企業は、自社でゼロから開発しようとすると多大なコストと時間を要します。しかし、専門性が高い企業とパートナーシップを結ぶことで、事業展開のスピードをはやめるとともに、サービスの質向上が期待できます。このSDGsの目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」の成功事例をぜひ参考にしてみてください。
出典:信用スコアリングでアフリカの金融に革新を起こすHAKKI AFRICA
出典:日本ユニセフ協会|17.パートナーシップで目標を達成しよう
持続可能なビジネスへのヒント
HAKKI AFRICAのSDGs取組みは、「誠実な努力が公平に報われる世界」というビジョンが基盤になっています。新興国にいる金融アクセスがない18億人と誠実に信用を築くことこそが豊かな人生への近道であると信じ、金融に関する問題解決に挑んでいるのです。
他社にはマネできないスピードとテクノロジーを武器に、低金利で低リスクな金融システムをアフリカで実現させました。
テクノロジーと金融をかけ合わせたビジネスモデルを通じて貢献するという軸がブレないからこそ、新興国における資金調達や経済的自立の支援が確立していると考えられます。また、高い専門性をもった研究者とパートナーシップを結ぶことで、圧倒的なスピード感をもって、質の高いサービスを届けられるといえるでしょう。
HAKKI AFRICAのように、開発途上国を苦しめる社会問題を大きなビジネスチャンスに変換できるかもしれません。新興国や後発開発途上国に向けたSDGs事業をこれから始めようと悩んでいる企業の方は、まずは自社の強みと最新テクノロジーをかけ合わせてみてはいかがでしょうか。
- 新興国における融資の問題を解決するビジネスを立ち上げる
- 最新テクノロジーを活用して、低コスト・低リスクを実現
- 信用スコアの改革のように、従来のやり方と方向性を大きく変える
- 積極的に高い専門性をもつ研究者や企業とパートナーシップを結ぶ
以上の点は、特に大きなヒントになるのではないでしょうか。ぜひ参考にしてください。