SDGsの目標7とは?「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」取組みへのヒント

    スイッチを1つ押すだけで照明がついたり、お湯が沸かせたりする……そんな便利な環境にある国ばかりではありません。世界には未電化の地域も、まだ数多く残されているのです。電力がないと、さまざまな問題につながります。

    そんな現状の解決を目指すために作られているのが、SDGsの目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」です。

    本記事では、目標7のターゲット・目標7が必要な理由・日本が持つエネルギー問題の課題や、目標7達成のヒントなどを紹介していきます。目標7は、質の高い教育や貧困など、他の目標にも直結していくものです。

    各企業でも、SDGsの目標7は取組んでいけるでしょう。マクドナルドやユーグレナなどの企業の取組み事例を参考にしながら、自社での方向性について検討していきましょう。

     

    【Pick Up】「ツヅケル」が注目したビジネスパーソンがSDGsの目標7を読み解くポイント

    • 質の高い教育をみんなに与え貧困をなくすためにも、目標7の達成が必要
    • 節電も目標7達成への大きなカギ

     

    SDGsの目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」5つのターゲット

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    SDGsの目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」では、すべての人が「安価かつ信頼できる持続可能な近代エネルギー」へのアクセスを確保することを目標としています。そのために設定されているのが、以下のターゲットです。

    【SDGsの目標7.エネルギーをみんなに そしてクリーンに】

    • 7.1 2030年までに、安価かつ信頼できる現代的エネルギーサービスへの普遍的アクセスを確保する。
    • 7.2 2030年までに、世界のエネルギーミックスにおける再生可能エネルギーの割合を大幅に拡大させる。
    • 7.3 2030年までに、世界全体のエネルギー効率の改善率を倍増させる。
    • 7.a 2030年までに、再生可能エネルギー、エネルギー効率及び先進的かつ環境負荷の低い化石燃料技術などのクリーンエネルギーの研究及び技術へのアクセスを促進するための国際協力を強化し、エネルギー関連インフラとクリーンエネルギー技術への投資を促進する。
    • 7.b 2030年までに、各々の支援プログラムに沿って開発途上国、特に後発開発途上国及び小島嶼開発途上国、内陸開発途上国のすべての人々に現代的で持続可能なエネルギーサービスを供給できるよう、インフラ拡大と技術向上を行う。

    2019年の段階で、世界人口のうち90パーセントが電力を使えるようになりました。電力状況は以前より改善されています。ただし現在でも7億人以上が電力を持たない状態であるため、継続して取り組まなくてはなりません。

    エネルギーは地球の環境問題にもつながります。そのためクリーンエネルギーの促進もSDGs目標7での大きな課題です。

     

    出典:「SDGsの目標とターゲット」|農林水産省

    出典:エネルギー進捗報告書|世界銀行

     

    SDGsの目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」が必要な理由

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    SDGs目標7は、エネルギー問題が大きなテーマです。また電力の普及やクリーンエネルギーの開発などもターゲットになっています。

    エネルギーが課題として必要となる代表的な理由は以下の3つです。

    • 人々の生命に直結する
    • 教育格差につながる
    • 地球環境に影響を及ぼす

    一つずつ解説していきます。

     

    人々の健康・生命に直結する

    エネルギー問題の解決が必要なのは、生命に直結するものだからです。健康を守り適切な治療をするためには、誰もが電気を使える状態にしなくてはなりません。

    たとえば、高所得国での女性の平均寿命は82歳です。しかしサハラ以南のアフリカでは58歳、南アジアでは69歳にまで下がります。大きな違いが生じている原因の1つとして、電気の問題が挙げられます。

    室内で裸火を使うと生じるのが「煙」です。煙は慢性的な心肺疾患の大きな原因となります。家事をする機会の多い女性と子どもへのダメージは特に深刻です。途上国に住む子どもの死亡原因として半分を占める肺炎も、この煙の影響を受けています。電気の代わりに使われる灯油ランプの煙は、子どもたちの目を傷つけるリスクを伴います。

    さらに肺炎を始め治療可能な病気になっても、病院に電気が通っていない地域では照明もなく、医療機器やワクチンなどを保管する冷蔵庫の電源が確保できません。

    電気は体への負担を減らすだけでなく、命を守る存在でもあります。小規模な太陽光発電があるだけでも、身体にかかる負担は大きく減らせるでしょう。また電力を普及する取組みは雇用を創出し、貧困問題の改善にもつながります。

     

    出典:クリーン・エネルギーは生命を守る|国際広報センター

    出典:Sustainable Energy for All | Sustainable Energy for All 

    出典:エネルギー進捗報告書:持続可能なエネルギーの普及のためには格差解消が不可欠

     

    教育格差につながる

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    エネルギー問題の解決は、教育格差をなくすためにも必要不可欠です。またSDGsの目標7「質の高い教育をみんなに」や目標1「貧困をなくそう」にもつながります。

    2019年の世界の未電化人口の割合は以下の通りです。

     

    • サハラ以南のアフリカ……75.0パーセント
    • その他アジア……6.5パーセント
    • パキスタン……5.8パーセント
    • バングラデシュ……3.6パーセント
    • ミャンマー……3.5パーセント
    • インド……0.7パーセント
    • その他……4.9パーセント

    アフリカのサハラ以南にある学校のうち90パーセントには、電気が通っていません。もちろん一般家庭も同じ環境です。ランプによる照明はありますが、目への負担がかかります。未電化地域は、家事に人の手が必要です。そのため勉強よりも家事が優先されてしまいます。教育が受けられないと、大人になってからの収入に影響するでしょう。
    さらに、電気がないということは、電力を使う産業が育たないことにも繋がります。産業が育たない限り、国が豊かになることは難しいでしょう。

    未電化地域の多くは途上国と重なります。SDGsの目標10「人や国の不平等をなくそう」にも目標1「貧困をなくそう」にもつながっていくのです。貧困や不平等をなくすためにも、電気の普及を推進していかなくてはなりません。

    出典:令和2年度エネルギーに関する年次報告(エネルギー白書2021) HTML版 │ 資源エネルギー庁 

     

    地球環境に影響を及ぼす

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    地球環境に影響を及ぼすのも、エネルギー問題の解決が必要となる大きな理由です。

    1950年、地球の人口は25.2億人でした。その後も増加を続け、2000年には60億人を突破。2022年には80億に、2058年には100億人にも達する見込みです。人口が増加し産業が発展するのに伴い、エネルギーの消費も増えていきます。これから途上国が発展するにあたって、エネルギーはさらに必要となるでしょう。

    現在は、石油や石炭などの化石燃料から生まれたエネルギーが主流です。しかし化石燃料には限りがあるうえ、エネルギーを作る時に二酸化炭素が発生し地球温暖化を促進します。

    解決につなげられるのが、クリーンで地球にも優しい再生可能エネルギーです。

    • 水力
    • 風力
    • 地熱
    • 太陽光
    • バイオマス

    そのためSDGsの目標7では、再生可能エネルギーが大きく取り上げられています。再生可能エネルギーは途上国だけでなく先進国にとっても必要なもの。再生可能エネルギーのさらなる開発・促進が必要です。

     

    出典:少子化の国際比較

    出典:国連人口基金 駐日事務所 / 世界人口は今年11月に80億人に:国連が「世界人口推計2022年版」を発表

    出典:総論|再エネとは|なっとく!再生可能エネルギー

     

    日本が解決すべきエネルギー問題での課題

    日本はエネルギー問題での課題を多く抱えている国です。以下の2つは、特に大きな課題として改善が求められています。

    • エネルギー自給率が低い
    • 化石燃料への依存度が高い

    日本のエネルギー自給率は、現在11.8パーセントしかありません。もともと国内に資源が乏しい日本では、エネルギーの多くを海外から輸入する必要があるのです。

    一時的にエネルギー源の分散化も進んでいましたが、東日本大震災の影響を受け原子力発電所が停止され、火力発電が増加。そこで現在は化石燃料への依存度が85.5パーセントです。

     

     

    海外からの輸入に頼りすぎると、エネルギーの確保が世界情勢により左右される状況になるのも大きな問題です。またエネルギーを確保するのにかかるコストも大きくなります。

    エネルギー自給率の低い日本では、再生可能エネルギーを開発・推進していかなくてはなりません。ただ、再生可能エネルギーでつくった電気をあらかじめ決められた価格で買い取る「固定価格買取制度(FIT)」が導入されて以降、推進は進みましたが国民の電気代への負担が大きくなっています。再生可能エネルギーは、国民の負担を下げながら推進していくことが重要です。

    出典:2020—日本が抱えているエネルギー問題(前編)|スペシャルコンテンツ|資源エネルギー庁 

     

     

    「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」を達成するための日本政府の取組み

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    SDGsの目標7と大きく関係しているのが、カーボンニュートラルです。日本では、2050年までのカーボンニュートラル実現を目標としています。そのためには再生可能エネルギーを浸透させなくてはなりません。

    エネルギーをクリーンにするための、日本による代表的な取組みは、以下の2つです。

    • 太陽光発電の促進
    • 改正地球温暖化対策推進法の成立

    私たちの生活にも影響する2つの取組みについて、内容を確認していきましょう。

    出典:第3節 2050年カーボンニュートラルに向けた我が国の課題と取組|経済産業省 資源エネルギー|

     

    日本のSDGs取組み事例①太陽光発電の促進

    再生可能エネルギーの比率を高めるため、日本政府では太陽光発電の促進を行っています。

    太陽光発電はクリーンなエネルギーの1つ。導入を推進するために、日本は2009年11月に太陽光発電の余剰電力買取制度を開始しました。

    その後に導入されたのが、固定価格買取を行う「FIT制度」です。しかしFIT法には、認定を受けた段階で買取価格が決まるというデメリットがあります。2012年には40円だった買取価格が、2017年21円にまで下がっているにも関わらず、初期参入業者の電気は今も高値で購入されているのです。供給が進んでも価格は高いまま。また、太陽光発電に参入したにも関わらず未稼働の発電所が存在しており、新規参入しても発電できないというのがFIT制度の大きな問題でした。

    そこで2022年4月からは、新しく「FIP制度」が開始されています。FIP制度は、補助額が一定で、収入が市場価格に連動する仕組みです。導入により、さらなる太陽光発電の促進が見込まれます。

    FITの調達価格は、最終的には国民の負担です。国民の負担が大きくなってしまうと、太陽光発電の促進は難しくなるでしょう。カーボンニュートラルを目指し、今後も状況に応じた柔軟な対応が求められます。

     

    参照:脱炭素ポータル|環境省 

    参照:FIT法改正で私たちの生活はどうなる?|経済産業省 資源エネルギー

    参照:再エネを日本の主力エネルギーに!「FIP制度」が2022年4月スタート|経済産業省 資源エネルギー庁 

     

    日本のSDGs取組み事例②改正地球温暖化対策推進法の成立


    2022年4月には、改正地球温暖化対策推進法(改正温対法)が成立しました。改正温対法には、2050年までのカーボンニュートラル実現が基本理念として盛り込まれています。

    改正の大きなポイントは以下の3つです。

    • 地球温暖化対策についての長期的な方向性を法律で明記
    • 再エネ活用事業の計画・認定制度の創設
    • 脱炭素経営・温室効果ガス排出量のオープンデータ化

    認定制度の創設では、関係法律のワンストップ化が期待できます。オープンデータ化を行うのは、企業の取組みを評価しやすい環境を作るためです。自治体や企業の動きが活発化すれば、国民の意識改革も見込まれるでしょう。改正温対法は、国民にも直接影響を及ぼす、大きな取組みになっていくと期待されます。

     

    参照:地球温暖化対策の推進に関する法律の一部を改正する法律案の閣議決定について | 報道発表資料 | 環境省 

    参照:改正地球温暖化対策推進法 成立 - トピックス - 脱炭素ポータル|環境省

     

    SDGs目標7に基づく企業の取組み事例

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    SDGs目標7に基づく企業の取組み事例を3つ紹介します。

    どのような取組みを行っているか、参考にチェックしてみましょう。

     

     

    マクドナルドのSDGs取組み事例:消費電力効率化

    大手企業であるマクドナルドは、知っての通りエネルギー問題に直結する企業ではありません。しかし目標7に関連する取組みを複数実施しています。

    そのなかの1つが「消費電力効率化」です。具体的な取組みの内容は以下となります。

    • プランドメンテナンスシステム
    • 設備機器のON/OFF管理
    • LED照明/デマンド監視装置

    プランドメンテナンスシステムは、従業員が定期的に機器の点検や清掃を行う仕組みです。メンテナンスで機械効率を維持して、消費エネルギーを削減するのを目的としています。

    設備機器の電源は、季節・営業時間・営業内容などをもとに管理。さらに店舗改装や入れ替え時には、LED照明や使用電力を監視できる装置を導入しています。

    企業の生産活動は、その多くでエネルギーを消費します。SDGs目標7に取組んでいくなら、エネルギーの使い方を積極的に見直さなくてはなりません。しかし節電を意識しようとしても、全社で意識を統一して取組むのは難しいもの。そこでマクドナルドのようにカレンダー化・システム化するのも効果的な方法です。

     

    参照:店舗の消費電力効率化で省エネ|日本マクドナルド

     

     

     

    みんな電力株式会社のSDGs取組み事例:横横プロジェクト

    みんな電力株式会社では、2016年から再生可能エネルギーを供給する小売り事業を実施。選択した発電事業者に基本料金の一部が届けられ、継続すると特典が届く仕組みです。

    取組みでは、「電力トレーサビリティ」システムを世界で初めて商用化。どの発電所からどれだけ電気を買ったかが可視化されています。

    また2019年からは、神奈川県横浜市の需要家と、青森県横浜町の発電事業者を結ぶ「横横プロジェクト」をスタート。この取組みは、SDGsの目標7だけでなく、目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」・目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」などにもつながります。

    国際社会のロールモデルにもつながる仕組みだとして、みんな電力株式会社は第4回ジャパンSDGsアワードで本部長賞を受賞しました。単に再生可能エネルギーを供給するだけでなく、地域間連携にもつながっている取組みです。

    これは電力会社ならではの取組みではあります。しかし再生可能エネルギーの小売りを実現しただけでなく、地域との連携を行っているのが大きなポイントです。地域や企業との連携で目標7に取組みつつ、新たな事業展開を推進していくのも良いでしょう。

     

    出典:受賞団体の取組(PDF)|第4回ジャパンSDGsアワード

     

     

    ユーグレナのSDGs取組み事例:バイオ燃料の開発・生産

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    日本でも有数のバイオテクノロジー企業である株式会社ユーグレナでは、10年以上前からバイオ燃料の研究開発をスタートさせています。

    2018年、ユーグレナは日本初となるバイオジェット・ディーゼル燃料製造実証プラントを竣工。プラントの竣工を機に、ユーグレナでは日本をバイオ燃料先進国にすることを目標とした『GREEN OIL JAPAN』を宣言しました。

    さらに2020年にはバイオディーゼル燃料、2021年にはバイオジェット燃料を完成させて供給を開始しています。現在では30社以上の企業・団体から賛同を得ており、バイオ燃料の供給先は増加中です。

    この取組みは、SDGsの目標7「エネルギーをクリーンに そしてみんなに」をピンポイントに捉えており、さらに目標13「気候変動に具体的な対策を」目標17「パートナーシップで目標を達成しよう」などにもあたります。バイオ燃料の開発を含む取組みで、ユーグレナは2021年にSustainable Japan Award 2021で「大賞」を受賞しました。ユーグレナは次世代バイオ燃料の供給を牽引する企業でしょう。

    バイオ燃料への取組みは決して簡単なものではありませんが、だからこそ社会的な評価にもつながる、価値のある取組みとなります。新産業を検討しているのなら、バイオ燃料を候補の1つとして、自社の事業につなげられないか考えてみるのも良いでしょう。

     

    参照:株式会社ユーグレナ|ユーグレナの事業紹介

    参照:サービスステーション(ガソリンスタンド)で ユーグレナバイオディーゼル燃料を一般向けに初販売 | 株式会社ユーグレナ 

    参照:Sustainable Japan Award 受賞企業・団体・自治体発表! - Sustainable Japan by The Japan Times

     

     

     

    SDGsの目標7達成のために企業ができること

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    SDGsの目標7は、エネルギー問題が大きな課題です。未電化の地域に再生可能エネルギーを届けられるなら、さまざまな問題を同時展開で解決していけます。目標7以外への効果に大きな期待もできるでしょう。

    再生可能エネルギーに関連する企業なら、海外との連携も視野に入れたいものです。ステークホルダーとの協業で取組みを推進する・地域の雇用を算出するなど、多様なアプローチが可能です。

    しかしエネルギーに直結しない企業も少なくありません。そんな時は節電もアプローチ方法として使えます。資源が少なくエネルギー自給率も低い日本では、節電も重要な取組みだからです。さらに節電は企業のコストダウンにもつながるもの。

    ただし節減が単なる目標で終わってしまう企業も少なくありません。うわべだけの取組みであるSDGsウォッシュになるリスクもあるでしょう。回避のためには紹介したマクドナルドのように、節電をシステム化していくのも効果的な手段です。コストダウンのために節電に取組むなら、形骸化しない方法を検討していくのが望ましいでしょう。

     

     

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    ツヅケル編集部

    持続可能な社会を一緒に考えるニュースサイト「ツヅケル」の編集部です。これからの環境・食糧・気候問題等をビジネス側から思考し、みんなで克服し、より豊かで幸せな毎日が送れる方法を探すための情報を日々キャッチし発信しています。

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