SDGsとは、そもそもどのようなものなのでしょうか。
自社で取組みを始めていないなら、漠然とした内容しか知らなくても無理はありません。「なんの略か分からない」「言葉の意味を知らない」という方も多いでしょう。
そこで本記事では、SDGsとは何か、基本についてわかりやすい言葉で説明していきます。SDGsについて、改めて内容を確認していきましょう。
2015年9月の国連サミットで採択された、2016年から2030年までの国際目標がSDGsです。正式名称は"Sustainable Development Goals"で、頭文字を取ってSDGsと呼ばれています。読み方は「エスディージーズ」で、日本語訳では「持続可能な開発目標」という意味です。
産業革命以降、人類は多くの資源を消費して経済発展を続けてきました。暮らしは豊かになり世界の人口も急増したものの、地球環境に与えたダメージは深刻です。現状のままでは、やがて地球の資源が枯渇します。そこで持続可能な開発目標が必要とされているのです。
出典:SDGs CLUB |日本ユニセフ協会(ユニセフ日本委員会)
出典:ESDGsの前文・宣言 | SDGsクラブ | 日本ユニセフ協会(ユニセフ日本委員会)
「誰ひとり取り残さない」のがSDGsそのものでの原則です。しかし社会問題・環境問題の現状には、国による違いが見られます。そのため国に合った実施指針が必要です。
日本のSDGs実施指針における主要原則は以下の5つとなります。
普遍性 |
国内実施と国際協力の両面で率先して取り組む。 |
包摂性 |
誰一人取り残さない。国内実施、国際協力のあらゆる課題への取組において、人権の尊重と ジェンダー平等の実現を目指し、子供、若者、高齢者、障害者、難民、国内避難民など、 脆弱な立場におかれた人々一人一人に焦点を当てる。 |
参画型 |
脆弱な立場におかれた人々を含む誰もが持続可能な社会の実現に貢献できるよう、あらゆるステーク ホルダーの参画を重視し、全員参加型で取り組む。 |
統合性 |
経済・社会・環境の三分野の全てに、複数のゴール・ターゲットの相互関連性・相乗効果を 重視しつつ取り組む。 |
透明性と説明責任 |
取組状況を定期的に評価し、公表・説明する。 |
誰ひとり取り残さず目標を達成するためには、国内での取組みだけでなく国際協力も必要です。また複数のゴールやターゲットに対し、相互関連性や相乗効果などを重視した取組みが求められます。
SDGsの前身となるのが、2001年に策定された「ミレニアム目標(MDGs)」です。
MDGsには一定の成果が見られました。しかし国による違いが大きく、途上国では現在でも、MDGsの目標を達成する見込みが立っていません。
そのためSDGsでの目標では、途上国への支援に重点が置かれました。また国際協力についても明記されています。
SDGsでは、17の目標が設定されています。
詳しく知るために、目標についてもチェックしてみましょう。
個別の問題に対するターゲットを設定しているのが、目標1~16です。そして目標17には、目標1~16を達成するために必要な内容が盛り込まれています。
SDGsの目標は、どれか1つを達成すれば良いというものではありません。また自国だけでなく、他国の問題にも向き合っていく必要があります。
「貧困や飢餓は他国の問題」と受け止める人もいるでしょう。しかし日本でもワーキングプアや子どもの相対的貧困率など、深刻な問題が多数あります。
そのためすべての目標に対する取組みが必要です。
出典:SDGs17の目標 | SDGsクラブ | 日本ユニセフ協会(ユニセフ日本委員会)
SDGsを達成するために設けられているのが、169のターゲットです。ターゲットのパターンには、「数字のみ」「数字+アルファベット」の2種類があります。
例として、目標1のターゲットを見てみましょう。
目標1の「貧困をなくそう」では、数字のみのターゲットが5つと、数字+アルファベットのターゲットが2つで構成されています。
1.1~1.5では具体的な目標の数値が確認可能です。1.aと1.bでは、その数値を達成する手段について明記されています。
さらに詳細な数値について明記しているのが、232の指標です。目標1のターゲット1.2なら、指標1.2.1と1.2.2があります。細かな指標まで覚える必要はありませんが、ターゲットには目を通しておくと良いでしょう。
出典:JAPAN SDGs Action Platform | 外務省
SDGsの達成状況は、「Sustainable Development Report」から確認できます。レポートによると2022年7月現在、日本のランキングは193か国中で19位です。
日本は上位ではあるものの、達成できていると判断された目標は3つに留まっています。
日本の場合は、ジェンダー平等や気候変動への対策が特に改善が必要な項目です。特に目標5 ジェンダー平等を実現しよう に関しては各国における男女格差を測る「ジェンダーギャップ指数」のランキングをみてみると、2021年の日本の順位は156か国中120位。昨年と比べてもほぼ横ばいの結果となりこれは、先進国の中で最低レベルです。
達成できているとされる項目についても、いまだ完全ではありません。そのため、すべての項目においてさらなる取組みが求められています。
出典:Sustainable Development Report
SDGsを達成するためにできることには何があるのでしょうか。どのような取組みをすべきか迷うビジネスパーソンも多いでしょう。
それぞれについて紹介しますので、取組みのヒントとして内容をご確認ください。
日本では多くの企業や組織が、SDGsに対する取組みを開始しました。ユーザー参加型の取組みをしている企業も多く存在します。
企業の場合、アイデア次第でさまざまな取組みが可能です。代表的なものとしては、次のようなものが挙げられます。
業種によって、取組みやすい目標には違いがあります。ただしステークホルダーとの協働により、取組みには大きく広がりを持たせられるでしょう。
取組み内容を考えるなら、SDGsに積極的な企業の事例をヒントにするのも良いでしょう。
自社でもSDGsに取組んでいるという方も多いでしょう。しかし目標を達成するためには、個人での取組みも重要です。
個人でできる具体的な取組みには以下のようなものが挙げられます。
「個人がSDGsに取組みを行う意味があるのだろうか」と考える方もいるでしょう。確かに社会問題について少数が短期間だけ取組んでも、得られる結果は小さなものです。
しかし大勢が継続して主体的な取組みを行うのなら、大きな成果へとつながるでしょう。
SDGsとは何かを知るために、よくある質問と答えも紹介します。関連する用語も覚えておくと、SDGsに対する理解を深めるのに役立つでしょう。
ぜひこれらのFAQについても最後までご確認ください。
SDGsは2016年から2030年までの国際目標です。2015年9月の国連サミットで、150を超える加盟国首脳の参加のもと、全会一致で採択されました。
ただし「何年までに達成すれば良い」というものではありません。
たとえば貧困や飢餓は、命にも関わる問題です。そのため早急な対処が必要になります。
SDGsへの取組みには、法的な拘束力がありません。
取組みにあたっては資格や認証なども不要です。国・自治体・企業・個人などが、それぞれ当事者意識を持って取り組みます。
「SDGsに取組んでいるように見せかける」のがSDGsウォッシュです。SDGsと、英語の「whitewash」を組み合わせた造語になります。whitewashとは、ごまかす・うわべだけといった意味を持つ言葉です。
取組む意向があってもSDGsウォッシュだと批判されている例もあります。例えば日本のメガバンクは、ドイツのNGO「Urgewald」の調査で、2018年10月〜2020年10月の間、世界の石炭産業に対して融資を行った民間銀行のうち、上位3位を占めているという結果が出ました。1番融資をしていたみずほ銀行は2019年に環境方針を定めていますが、最も投資をしていたという調査結果が出てしまったのです。
SDGsでは実現可能な取組みが必要です。実態が伴わないと企業や組織へのイメージダウンにつながりかねないため、誤解を受けないよう注意が必要です。
出典:「石炭産業に融資しないで」だから私は銀行口座を変える。“ダイベストメント”に日本のメガバンクはどう向き合うのか。|ハフポスト
出典:サステナビリティへの取り組み強化について ~脱炭素社会実現に向けたアクション強化~|みずほ銀行
日本で2030年に表面化すると考えられる問題の総称が「2030年問題」です。具体的には以下のような問題が挙げられます。
少子高齢化が進む日本では、今後ますます高齢者が増加していきます。現在すでに問題となっているのが、労働力の減少です。過疎地域も2030年までにはさらに増加する見込みとなっています。
さらに「エコロジカル・フットプリント」という指針では、2030年には地球2個以上の資源が必要になる見込みです。現状のままでは地球の資源を使い果たしてしまうおそれがあるため対策していかなくてはなりません。
ディーセント・ワークとは「働きがいのある人間らしい仕事」です。
世界には、劣悪な環境で労働を強制される人が大勢存在します。そのなかでも特に深刻な問題が、児童兵士です。18歳以下で軍や武装組織に参加させられている子どもたちが、世界には25万人以上います。
現代奴隷制とも呼ばれる、強制結婚も大きな問題です。SDGsの目標8「働きがいも経済成長も」を達成するには、ディーセント・ワークの実現が求められます。
SDGsの目標17のターゲットに登場する言葉が「ステークホルダー」です。ステークホルダーには、「利害関係者」という意味があります。
企業や行政などに、直接的あるいは間接的な利害関係を持つのがステークホルダーです。株主・経営者・従業員・顧客・取引先など、さまざまなものがあります。
SDGsへの取組みを行うなら、ステークホルダーとの協働が重要です。
出典:ステークホルダーとは?ビジネス用語の正しい意味と使い方|フレマガ ~新社会人・新入社員をサポート~
多様性を意味するのが「ダイバーシティ」です。ダイバーシティとは、さまざまな属性を持つ人が集まった状態を意味します。
属性とは以下のようなものです。
ダイバーシティはSDGsと大きく関係しているキーワードです。ジェンダー平等や公正だけでなく、さまざまな目標に関わっています。
出典:ダイバーシティとは?意味や基礎知識、取り組み事例をわかりやすく解説
SDGsの目標1 貧困をなくそうに登場する言葉の中に「絶対的貧困・相対的貧困」というものがあります。
目標1 の中でも説明されていますが、そもそも貧困は次の2種類に分けられます。
「十分な食料が手に入らず飢餓に陥る」「必要な医療が受けられない」といった状態が、絶対的貧困です。相対的貧困とは、特定の水準と比較して貧しい状態を意味しています。
途上国だけでなく先進国でも貧困は大きな課題です。相対的貧困率が高くなると、その地域は収入格差が広がっていると言えるでしょう。日本の場合は相対的貧困が大きな問題です。
貧困は途上国だけでなく、先進国にも対策が求められます。
出典:相対的貧困とは?相対的貧困が与える生活への5つの影響と私たちにできること
SDGsとは、「持続可能な開発目標」を意味する言葉です。
地球で暮らし続けるためには、持続可能な社会を築き上げる必要があります。資源が枯渇する見込みである状態で、そのままの生活を続けるわけにはいかないでしょう。
SDGsは「自国の目標だけを達成すれば良い」というものではありません。すべての国が目標を達成できるよう、国際協力が求められます。また国だけでなく、企業や個人などによる主体的な取組みが必要です。
SDGsを軸に事業を展開している企業もあります。うまく本業に取り入れて収益につなげている企業も多いものです。持続可能な社会を作るためには何ができるか、自社内で検討してみてはいかがでしょうか。
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