SDGsの目標10.人や国の不平等をなくそう。10のターゲットを踏まえたSDGsの取組み方

    SDGs(持続可能な開発目標)の目標10は「人や国の不平等をなくそう」を切り口に、各国内や国同士での不平等を改め、正すことを定めています。特に多くの国で所得の格差がかつてないほど広がっています。これは日本の課題ともいえるのです。

    本記事では、SDGsの目標10で定めている10のターゲットとポイントを解説します。また、今後わたしたちが取り組むべきこととソフトバンクや大川印刷といった企業が既に取組んでいる事例をあわせてご紹介します。ビジネスパーソンとしてSDGsへの取組み方を読み解くヒントをお伝えしていきますので、ぜひご覧ください。

     

     

    【Pick Up】「ツヅケル」が注目したビジネスパーソンがSDGsの目標10を読み解くポイント

    • “人や国の不平等をなくそう”の具体的な取組みキーワードは「所得格差の緩和」「社会保障や福祉制度の充実」「移民の人権保障」
    • 企業が取組みやすいポイントは、だれもが働きやすい環境づくりの見直し

     

    SDGsの目標10「人や国の不平等をなくそう」の10のターゲット

    SDGsの目標10「人や国の不平等をなくそう」では、だれ一人取り残さないために、各国内での不平等、国と国の間にある不平等をなくすことを目指しています。

     

    この目標を実現するため、10個のターゲットが設定されています。

    【SDGsの目標10.人や国の不平等をなくそうの10のターゲット】

     

    • 10.1 2030年までに、各国の所得下位40%の所得成長率について、国内平均を上回る数値を漸進的に達成し、持続させる。
    • 10.2 2030年までに、年齢、性別、障害、人種、民族、出自、宗教、あるいは経済的地位その他の状況に関わりなく、全ての人々の能力強化及び社会的、経済的及び政治的な包含を促進する。
    • 10.3 差別的な法律、政策及び慣行の撤廃、並びに適切な関連法規、政策、行動の促進などを通じて、機会均等を確保し、成果の不平等を是正する。
    • 10.4 税制、賃金、社会保障政策をはじめとする政策を導入し、平等の拡大を漸進的に達成する。
    • 10.5 世界金融市場と金融機関に対する規制とモニタリングを改善し、こうした規制の実施を強化する。
    • 10.6 地球規模の国際経済・金融制度の意思決定における開発途上国の参加や発言力を拡大させることにより、より効果的で信用力があり、説明責任のある正当な制度を実現する。
    • 10.7 計画に基づき良く管理された移民政策の実施などを通じて、秩序のとれた、安全で規則的かつ責任ある移住や流動性を促進する。
    • 10.a 世界貿易機関(WTO)協定に従い、開発途上国、特に後発開発途上国に対する特別かつ異なる待遇の原則を実施する。
    • 10.b 各国の国家計画やプログラムに従って、後発開発途上国、アフリカ諸国、小島嶼開発途上国及び内陸開発途上国を始めとする、ニーズが最も大きい国々への、政府開発援助(ODA)及び海外直接投資を含む資金の流入を促進する。
    • 10.c  2030年までに、移住労働者による送金コストを3%未満に引き下げ、コストが5%を越える送金経路を撤廃する。

     

    SDGsの目標10「人や国の不平等をなくそう」は、主に「貧困をなくし、所得の格差をへらすこと」と「性別や宗教、年齢や国籍などによる差別をなくすこと」「移民の生活を守る」が目的です。10のターゲットは、上記3つの目的を実現するための具体的な対応の方向性として明記されていることを理解しておくとよいでしょう。

     

     

    出典:Television Osaka テレビ大阪

    出典:SDGsとは? | JAPAN SDGs Action Platform | 外務省

    出典:SDGグローバル指標| 外務省




    SDGsの目標10「人や国の不平等をなくそう」が必要な理由

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    あらゆる不平等をなくすためには、不平等な現状を把握した上で、悪い点を改めて正す必要があります。

    SDGsの目標10のターゲットの内容から、ビジネスパーソンとして押さえておくべき3つの要点をご紹介します。

     

    【不平等をなくすべき3つの理由】

    • かつてないほど所得格差が広がっているから
    • 年齢や障がいなどによる差別によって苦しんでいる人がいるから
    • 移民を守る政策が不十分だから

    次から1つずつみていきましょう。

     

     

    かつてないほど所得格差が広がっている

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    世界的にみると、かつてないほどの所得格差が広がっています。2017年には世界人口のもっとも豊かな1%の人が持つ資産は、世界全体の資産の約33%にあたるという調査結果が出ました。一方、もっとも貧しい25%の人が持つ資産の割合は、世界全体の資産の10%にすぎません。

    国連の報告によると、この問題は少し改善の兆しが見られていたものの、新型コロナウイルス感染症の拡大によって、悪化する可能性があると言われています。また、所得の不平等を数値化したジニ係数が、新興市場と開発途上国で6%上昇する見込みです。ジニ係数では0が所得の平等を指すので、所得格差は悪化しています。
    貧困をなくすことは、不平等をなくすことに大きく関係していると言えるでしょう。

    貧困の格差は、国と国同士の問題だけではありません。一つの国の間でも深刻な問題となっています。

     

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    都市人口の増加に伴い、都市部と農村部での所得格差や貧困率が拡大しています。極度に貧しい人の割合は、都市部と農村部では3倍以上。

     

    どの国や地域に暮らしていても、豊かな生活ができる社会にするため、これらの問題を解決しなければいけません。

     

    出典:国連広報センター

    出典:日本ユニセフ協会|10.人や国の不平等をなくそう

    出典:内閣府|第3章 人口・経済・地域社会をめぐる現状と課題

    出典:国連広報センター|SDGs報告2021

     

     

     

    年齢や障がいなどによる差別によって苦しんでいる人がいる

    日本の社会保障は、「年金」「医療」「介護」「子ども・子育て」などの分野に分けられ、制度も整っています。また、国の一般会計歳出の約3分の1を占める支出項目となっており、働きたくても何らかの理由で思うように働けない人たちの生活を支えています。

    では、世界の状況はどうでしょうか。必要なお金を支給したり、最低限の生活を営むことを保障したりする制度である社会保障が不十分な国は多くあります。

     

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    この世界の社会保障の現状をまとめたグラフをみると、以下のことがわかります。

    • 家計が困窮した時に政府から助けてもらえない子どもは、3人に1人
    • 重度障害があっても政府から援助がない方は、3人1人

    こうした状況をふまえ、SDGsの目標10では、差別的な政策をなくし、社会保障を充実させることが定められています。

     

    出典:日本ユニセフ協会

    出典:財務省|増大する社会保障とは何か?

     

     

    移民を守る政策が不十分だから

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     外国へ移り住んでいる移民を守る環境は、まだ十分ではありません。数多くの国に移民を守る政策がありますが、データがある105カ国で比較すると、移民の権利や社会・経済面での福祉までサポートする制度がある国は6割未満といわれています。

     

    さらに国連の報告によると、2020年は、世界中の移住経路で4,186人が死亡または行方不明になっています。移民せざるを得ない人たちの多くの命が奪われていることがわかります。

     

    移民の生活を守るために、安全性が管理された移住に関する政策を実施したり、混乱がなく安心して手続きができる環境を整えたりすることが必要といえるでしょう。

     

    以上のように、SDGsの目標10「人や国の不平等をなくそう」の10のターゲットから、主に所得格差の緩和や、差別的な政策を廃止し社会保障の充実を図ること、移民の権利を保障することなどの目標の方向性が分かります。

     

     

     出典:日本ユニセフ協会|10.人や国の不平等をなくそう

     出典:国連報告センター

    出典:国連広報センター|SDGs報告2021

     

     

     

    不平等をなくすための日本政府の取組み

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    日本政府は、不平等をなくすためにどのような取組みをしているのでしょうか。今回は、2つの事例を紹介します。

    • 開発途上国への貿易協力
    • ポジティブ・アクション

    では、それぞれについてみていきましょう。

     

     

    日本のSDGs取組み事例①:開発途上国への貿易協力

    日本政府は、開発途上国への貿易協力をしています。主要な先進国は、途上国の輸出を促進するため、通常の関税率よりも低い一般特恵関税制度(GSP)を適用。さらに、後発開発途上国にはより低率のGSPを設けています。これらの取組みにより、世界貿易に占める途上国のシェアは拡大を続けています。

     

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    日本政府も1971年から同制度の適用を開始。2017年4月1日現在、135カ国5地域を特恵受益国・地域として指定し、このうちさらに47カ国・地域を低率のGSPを設ける地域に指定しています。

     

    出典:日本貿易振興機構

    出典:一般特恵関税制度(GSP):日本貿易振興機構

     

     

    日本のSDGs取組み事例②:ポジティブ・アクション

    ポジティブ・アクションとは、「課長以上の管理職は男性が大半を占めている」など、男女の間に生じている格差を解消するため、個々の企業が行う自主的かつ積極的な取組みのことです。

     

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    これまでに日本で行われた性別差解消のもっとも大きな取組みは、「男女雇用機会均等法」(1986年)。同法の施行により、採用、昇進、解雇などについて性別を理由にした差別が禁止されるなど、改善は見られました。けれども、日本のジェンダーギャップ指数は120位(2021年)と先進国で最低レベル。まだまだ性別差解消のポジティブ・アクションが求められています。

     

    アイスランドやフィンランドなど、他国からヒントをもらいながら、性別問わず自分らしく働ける社会を目指すべきなのではないでしょうか。

     

     

    出典:内閣府男女共同参画局  ポジティブ・アクション

     出典:内閣府男女共同参画局|「共同参画」2021年5月号



    不平等をなくすためにわたしたちにできること

     

    不平等をなくすためにわたしたちにできることの1つとして、「フェアトレード」の商品を選択する方法があります。

    フェアトレードとは、直訳すると公正な取引という意味。フェアトレード商品にかかわる「生産者」「仲介者」「製造者」「販売者」「消費者」など、すべての人が社会的・経済的に守られています。

    実は、先進国などで安く商品を売るために、開発途上国の生産者を低賃金や劣悪な環境で働かせることが問題になっているのです。その結果、貧困や児童労働を招いています。

    けれども、フェアトレードの場合、開発途上国で生産されるカカオやコットンなどは、常に適正価格で売買されています。そのため、原料を異常に安く買い取ることや、過酷な環境で働かされることはしていません。

    つまり、フェアトレード商品を買うことは、貧困から救うことにつながるのです。

     

    フェアトレード商品の知名度は、日本ではあまり高くないのが現状です。しかし、フェアトレード商品の価値が浸透すれば、貧困率や所得格差を減らせるといえます。

     

    日本でも、以下の方法で購入可能です。

    • 国際フェアトレード認証がついた商品を買う
    • フェアトレードに特化した通販サイトを利用する

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    国際フェアトレード認証ラベル The FAIRTRADE Mark

    貧困という不平等をなくすために、できることをはじめることが何より大切です。買い物をするときに「安いかどうか」だけで判断するのではなく、「社会にやさしいかどうか」という判断基準もプラスさせていくべきではないでしょうか。

    また、消費者にとっても毎日の自身の買い物行動を少し変えるだけで、貧困率や所得格差の解消に寄与できることがわかれば、これまでよりも気持ちよく商品を購入できます。エシカル消費やSDGs消費を取り込むためにも、企業として今から取組みを始める必要があります。

     

     

    出典:FairtradeLabelJapan

    出典:国際フェアトレードジャパン

     

     

     

    SDGsの目標10に基づく企業の取組み事例

    SDGsの目標10である「人や国の不平等をなくそう」を実際に企業が取組んでいる事例について紹介します。

     

    それぞれについて内容を確認していきましょう。

     

     

    ソフトバンクの取組み事例:女性管理職比率20%に

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    日本国内でも大手の電気通信事業者であるソフトバンク株式会社(以下ソフトバンク)では「レジリエントな経営基盤の発展」のため、多様な人材が活躍する職場環境の構築も推進しています。2021年6月22日、ソフトバンクは「2035年までに女性管理職の比率を現在の3倍である20%にする」と発表。目標の達成に向け、外部の有識者を迎えた「女性活躍推進委員会」を発足させました。

    日本の企業ではリーダーや管理職になれる女性が多くありません。入社時は同程度の仕事量やスキルを求められるにも関わらず、出世するのは男性ばかり。これはジェンダーによる不平等であるといます。

    ダイバーシティ&インクルージョンが進むと、組織内の視野も大きく広がっていくでしょう。これからの時代に必要なビジネスの創造性には、まずメンバーの視点の多様性が基盤となります。積極的にジェンダー平等を推進するソフトバンクは、未来に向けてのクリエイティビティの推進をしているともいえます。

     

    写真(Tupungato / Shutterstock.com)

    出典:多様性の一丁目一番地。ソフトバンクで加速する女性活躍推進の取組み|SoftBank SDGs Actions #6

     

     

     

     

    大川印刷の取組み事例:難民の雇用

    BASE-1205x530 (1)-1大川印刷は、1881年に創業した横浜市の印刷会社です。社会的課題を解決できる「ソーシャルプリンティングカンパニー」を標榜し、SDGsについても積極的な取組みを行っています。

    2019年、大川印刷では初めて難民認定申請者の採用を行いました。

    申請をしても難民の認定を受けるのは簡単ではありません。2019年には約1万人が申請していますが、認定されたのはわずか44人です。なかには10年以上も認定を待ち続ける難民も存在します。認定を受けるまで、申請者は住居や仕事でも苦労しているのが現状です。

    採用者はイスラム圏の国で生まれ育ち、部族抗争によって帰国できなくなりました。

    さまざまな意見があるなかでの採用でしたが、採用者は英語力が評価され、社内でもサポートが行われています。

    難民受け入れは、SDGsの目標10「人と国の不平等をなくそう」目標16「平和と公平をすべての人に」などに該当する取組みです。取組みはテレビ番組でも取材を受け、大きな注目を集めました。

    2021年の日本での難民認定率は0.7パーセントでした。他国から見ると、極端に少ない数字です。制度面の問題もあり、改善を求める声が上がっています。

    誰一人取り残さない社会を目指すなら、難民問題も避けて通れないでしょう。自社でSDGsに取組むのなら、参考にしたい事例の1つです。多様な人材の雇用は、企業にとって大きな武器ともなります。働き手の不足が現実的に大きな問題となっているのが日本です。難民雇用は、その問題解消につながる取組みでもあります。

     

    参照:日本の難民認定はなぜ少ないか?-制度面の課題から|難民支援協会

    参照:「誰一人取り残さない」を本気でやる “難民”を雇用し新型コロナに立ち向かう中小企業 未曾有の危機に挑戦する老舗印刷会社

     

     

     

     

    日本リユースシステムの取組み事例:古着deワクチン×雇用創出

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    日本リユースシステムは、リユースを専門とするベンチャー企業です。「古着deワクチン」を筆頭にビジネスと社会貢献を連動させたSDGs事業を生み出してきました。

     

    「古着deワクチン」は、雇用創出にもつながっています。まとめると以下の通りです。

    • 障がいがある方の仕事が生まれる
    • 日本在住の外国人が活躍する古着deワクチンセンターにて輸出前の作業が生まれる
    • 開発途上国で販売、選別、輸送などの仕事が生まれる

    このように、国内外の雇用を生み出しているのです。専用回収キットは、全国の福祉作業所で製造しています。衣類の輸出は、フィリピン女性が中心に活躍するセンターが担当。さらに、開発途上国での選別や販売は、完全に現地スタッフにお任せしているそうです。

    この取組みは、SDGsの目標1「貧困をなくそう」、目標8「働きがいも経済成長も」、目標10「人や国の不平等をなくそう」に貢献しています。

    すべての事業を自社で完結させるのではなく、障がいのある方や開発途上国の方を積極的に採用することで、経済的な自立を支援できます。このような雇用の多様性は、SDGs事業の大きなヒントになるのではないでしょうか。

     

    画像出典:古着deワクチンとは?|古着deワクチン

    参照:日本リユースシステム|SDGs

    参照:古着deワクチン|古着deワクチンとは?

     

     

     

     

     

    持続可能なビジネスへのヒント

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    SDGsの目標10「人や国の不平等をなくそう」では、あらゆる不平等をなくすための国際的な取組みが求められています。

    改めて、SDGsの目標10の実現に求められている要点は、以下3点です。

    • 貧困をなくし、所得格差を緩和させる
    • 年齢や性別、障がいや国籍などによる差別をなくし、社会保障を整える
    • 移民の命や生活を守る環境を整える

    自社の本業が開発途上国から原料を調達している場合は、今回ご紹介したフェアトレード認証製品を取り入れるなど、直接的な取組みができるでしょう。

    一方、商品の開発や販売に携わらない場合は、取組み方の糸口がつかみにくいかもしれません。SDGsに積極的に取り組まれている企業事例を読み解くことで、不平等をなくす取組みのヒントが見えてくるはずです。

    特に「女性や若手社員の働き方のサポート」は取組みやすい内容です。女性が自分らしく活躍するには何が必要か、若手社員が能力を発揮するために必要な研修は何かを探求することで、改善できる余地が見つかるかもしれません。ぜひ試してみてはいかがでしょうか。

     

     

     

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    ツヅケル編集部

    持続可能な社会を一緒に考えるニュースサイト「ツヅケル」の編集部です。これからの環境・食糧・気候問題等をビジネス側から思考し、みんなで克服し、より豊かで幸せな毎日が送れる方法を探すための情報を日々キャッチし発信しています。

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