2030年にSDGsの目標達成をするためには、SDGsの取組みについて理解することが大切です。実は、SDGsに取組むことは、企業の持続可能な経営にも大きくつながります。
SDGs事業にまだ着手していない企業も、これから始めようと考えている場合も多いのではないでしょうか。持続可能な経営のためにSDGsの取組みに関する具体例や成功事例を知ることは大切です。この記事では、企業が取組む身近で面白いSDGsの事例を解説するとともに、個人でできる取組みも詳しくお伝えしていきます。
【PickUP】「ツヅケル」が注目したSDGs取組みのポイント
- SDGsの取組みは、企業と個人でできることがある
- 自社の強みを生かした身近な取組みや面白い事例が注目を集めている
- SDGsの取組みは企業の持続可能な経営につながる
SDGsに取組むメリットとは?
そもそも、SDGsに取組むメリットとはどんなことなのでしょうか。「消費者」「企業」「自然環境」の3視点から解説します。
①消費者へのメリット:安心・安全な生活
個人がSDGsに取組むことで、「安心・安全な生活を得られる」というメリットがあります。SDGsは、環境問題だけではなく、健康や医療、教育、住みやすい町づくりに取り組むことも目標に掲げています。つまり、SDGsの目標達成に近づくことで、自分や家族の生活がより豊かになるといえるでしょう。
②企業へのメリット:持続可能な経営
企業にとっては、持続可能な経営につながるというメリットがあります。都心部だけではなく、地方のような地域でも経済が成長する仕組みが整えば、日本全体の経済成長も期待できるでしょう。
最近は、消費者や投資家の中でも「企業がどれだけSDGsに貢献しているか」を重視する方も増えています。つまり、売上アップにも、資金調達にもSDGsは大きな影響を与えるのです。
長期的にみれば、企業の社会的信頼を築くことができるので、持続可能な経営を支えてくれるのではないでしょうか。
③自然環境へのメリット:豊かな自然を守る
SDGsに取組むことで、豊かな自然を守れる可能性が高まります。現在、世界中で異常レベルな気候変動が起こっています。日本では、熱帯夜の平均日数は、1910年からの30年間で平均の約2.6倍も増加。夏の暑さや大きな自然災害など、生活の中で気候変動を感じる方も多いのではないでしょうか。
自然災害や異常気象は地球温暖化が原因。つまり、気候変動対策をすることは、豊かな自然を守ることだけではなく、快適な生活も叶えることができるのです。
参照:気象庁ホームページ「大雨や猛暑日など(極端現象)のこれまでの変化」
身近にある企業のSDGs取組み:4事例
では、企業はSDGsへどのように取り組んでいるのでしょうか。まずは、生活の身近にある取組みを4例ご紹介します。
①セブンイレブン「地域に根ざしたSDGs」
セブンイレブンでは、消費者を巻き込みながらSDGsの取組みをしています。
・環境を守る商品開発
セブンイレブンは、2019年5月に環境宣言「GREEN CHALLENGE2050」を制定。全国にある店舗で、「環境負荷を減らすこと」「豊かな地球環境を未来に残すこと」を軸にSDGsの取組みをはじめました。
例えば、食品ロスを削減。食品廃棄物を出さない商品開発に努めています。素材や製造過程などを見直すことで、質や鮮度を保ったまま、従来よりも長い賞味期限のお弁当を開発したのです。
さらに、パンやお惣菜についても鮮度が持続する商品を開発することで、食品ロス削減を目指しています。
消費者にとっても買った食べ物を無駄にしなくて済むので、メリットが大きいのではないでしょうか。環境や社会問題の解決にセブンイレブンの身近な店舗である強みが生かされていました。
・近くて便利な防災対策
各自治体とパートナーシップを築いた「地域の防災」も具体的の一つ。大きな自然災害が発生した場合には、必要な物資を被災地へ届けられるようなシステムを整えています。現在では、37都道府県と28市町村の物資供給の協定を結んでいるそうです。
さらに、NTT東日本と協力して、東京23区の店舗に災害用電話機も設置。災害が発生した時でも、無料で安否確認できます。他の企業とパートナーシップを結びながら、住み続けやすい町づくりをすることも大きな貢献といえるでしょう。
参照:GREEN CHALLENGE 2050|セブンイレブン
②ローソン「環境に配慮したパッケージ」
ローソンは地球に優しい生活を実現するために「ホットやさしいプロジェクト」に取組んでいます。
引用:【ローソン】ほっとやさしいプロジェクト始動しました!|ローソン
・プラスチックの削減活動
コンビニ大手ローソンは、プラスチック削減の活動に尽力しています。実は、国内のプラスチック廃棄物は「903万トン」。これを少しでも減らすために、2050年にはオリジナル商品を「環境に配慮した素材を100%にする」という目標を掲げました。
例えば、プラスチック製の包装容器から環境に配慮した素材へ変更しています。具体的な内容は以下の通りです。
- お菓子の包装をプラスチック製から紙製へリニューアル
- お惣菜などのパッケージを自然由来の素材に改善
- マチカフェのアイスコーヒーカップを紙素材に変更
- アイスコーヒーを「ストローを使用しないで飲めるフタ」に変更
このように、具体的な数値目標を掲げ、目に見える身近な取組みをすることは、社会的信頼につながるのではないでしょうか。
引用:環境ビジョン Lawson Blue Challenge 2050!|ローソンのサステナビリティ|ローソン
・環境を守るコンビニへ
ローソンは、全国各地に「環境に優しい新店舗」をオープンしています。例えば、以下のような特徴があります。
- 「太陽光発電」や「LED照明」を導入
- 二酸化炭素の排出量を半減できる冷凍・冷蔵システムの導入
この具体例から、商品だけではなく、販売する店舗自体も気候変動対策に貢献する環境に改善していくべきであることを実感できるのではないでしょうか。
③イオン「環境にやさしいプライベートブランド」
「イオンモール」や「まいばすけっと」などで、買い物する方も多いのではないでしょうか。SDGsに関する事例を以下にくわしくまとめました。
・環境に優しいプライベートブランド「グリーンアイ」
イオンは「グリーンアイ」というプライベートブランドを立ち上げました。この商品は、身体に優しいだけではなく、環境や社会に配慮した商品であることを保証しています。
「グリーンアイ・オーガニック」というマークを見たことがある方はいるでしょうか。このマークがついた商品は、原料から有機栽培にこだわっている商品です。
有機栽培とは、最低限の農薬や化学肥料を使用し、自然由来の力で栽培する方法です。そのため、安全性が高く、環境保護にもつながります。安心安全でおいしいだけではなく、環境にもやさしい商品は、消費者も買いたくなるといえるのではないでしょうか。
参照:自然と体にやさしい、心豊かなくらしを。|トップバリュ グリーンアイ
・100%地産地消の再生エネルギー
脱炭素社会の実現に向けて、太陽光発電のような再生可能エネルギー活用に取組んでいます。数値目標として「2040年までに直営モールで、100%地産地消の再生可能エネルギーにすること」を掲げています。
企業が使用する電力を自社で賄うという事例は、SDGの目標13「気候変動に具体的な対策を」へのヒントになるのではないでしょうか。
参照:自己託送方式による低圧・分散型太陽光発電 「イオンモール まちの発電所」稼働開始!|イオン
④ユニクロ「服のチカラ」
ユニクロは、「服のチカラ」でSDGsへ貢献しています。
・リサイクル素材で服の生産
リサイクル素材で服を生産することで、ゴミ削減に協力しています。飲み終わったペットボトルで作られた糸を使用し、新しい服を製造しているのです。
例えば、「ファーリーフリースフルジップジャケット」は生地の30%がリサイクルポリエステル製。「ドライEXポロシャツ」でも素材の一部にリサイクル素材が使用されています。リサイクル資源と再生技術を掛け合わせることで、リサイクル率アップを実現しました。
・開発途上国への衣料支援
回収した服を難民キャンプに寄付しています。ここで評価すべき点は、ただ大量に送るだけではなく、現地の人数にあった服を届けていることです。実は、大量の衣料品が世界中から届くことで、発展途上国が処理に困惑していることが問題視されています。
寄付や募金は社会貢献として価値あるものですが、迷惑になる可能性も忘れてはいけません。寄付される側をしっかり考えて、必要な数量や種類など、ニーズを確認した上で支援することが大切であるといえるのではないでしょうか。
引用:【短編映画】服の旅先―日本発のリサイクル服が、難民の少女へ届くまで。知られざる舞台裏を初公開|ユニクロ
面白い!SDGsの取組み5選
続いては、面白いSDGsの取組みを5例紹介します。興味深い事例を厳選したので、新事業のヒントになるかもしれません。
①ネスレ・コーヒーをアップサイクル
「ネスカフェ」と「日清紡グループ」は、アップサイクルでパートナーシップを結び、あるプロジェクトを実施しています。それは、コーヒーのパッケージやコーヒーのカスを衣料品にアップサイクルすることです。
ネスレが販売するコーヒーのパッケージを回収し、布生地へアップサイクルしています。そして、コーヒーのカスは染料と生まれ変わることで、新たなTシャツ、トートバッグ、エプロンなどが生産されているのです。
ゴミ削減に貢献することで、二酸化炭素の排出を抑えることができます。商品販売している企業は、自社の商品で何か面白いアップサイクルができないか検討してみてはいかがでしょうか。
参照:ネスカフェと日清紡グループがアップサイクルでコラボレーション!|ネスレ
②みんな電力(株式会社UPDATER)・顔が見える電力
みんな電力(現:株式会社UPDATER)は、再生可能エネルギーに特化した電力会社です。「みんな電力」は、電気をつくる人と電気を使う人をつなぐことを実現させました。
主な電源構成は「発電した再生可能エネルギー」と「買い取った再生可能エネルギー」の電気比率が77.2%。日本全体が16.9%に対して、7割超えしていることから、普及が進んでいるのは明らかです。
さらに、SDGsを積極的に推進する団体を応援するために、同じように脱炭素に賛同する企業や自治体、中小企業に電力を供給する活動も実施しています。持続可能なエネルギーを通して、人と人、企業と企業をつないだ興味深い事例といえるでしょう。
引用:日本初!再エネ特化型の新電力支援サービス “毎日助ける”「まいける」を本格サービス化|みんな電力
③トヨタ・まちづくり
トヨタでは、最先端の自動車製造のノウハウを生かして、持続可能なまちづくりに貢献しています。特に、面白いのは「トヨタのwovencity(ウーブン・シティ)」。これは、人々の未来の生活、働き方、移動をアップデートした革新的なプロジェクトです。2021年2月に東富士工場跡地で建設が始まり、2024年には一部エリアで実証実験ができるよう準備が進められています。
「wovencity(ウーブン・シティ)」では、「e-Palette」のような新しい移動手段を活用しながら、「ヒト中心のまち」、つまり未来の当たり前を発明することを目的として掲げています。ちなみに「e-Palette」とは、自動運転できる自動車。自動車が必要なときに近くまで来てくれたり、行きたいところに連れて行ってくれたりするのが可能となります。さらにバリアフリーにも特化し、入り口も広いので車いすやお年寄りの方でも乗り降りがしやすさも重視した自動車です。
つまり、移動販売も可能なので、買い物のためにお店にいくのではなく、お店が来てくれるという新しいライフスタイルの実現といえます。自動運転と最新技術をフル活用することで、地方創生を目指しているのです。まさに、自社の強みを生かした地方創生の事例といえるでしょう。
④有楽製菓・スマイルカカオ
ブラックサンダーを販売する有楽製菓は、「スマイルカカオプロジェクト」を実施していて、2022年内に、ブラックサンダーに使用するカカオを児童労働撤廃へつながる「スマイルカカオ」に切り替えることを発表しました。美味しいお菓子だけではなく、社会貢献できるお菓子づくりを目指しているのです。
スマイルカカオには、「たくさんの笑顔”の中には食べる人だけでなく、作る人を含むみんなを笑顔にしたい」という強い思いが込められています。ブラックサンダーを購入することで、児童労働の解決につながるのです。
ブラックサンダーで使用される「カカオ豆」は主に西アフリカ諸国で生産されています。しかし、カカオの生産は児童労働が大きな問題となっていて、ガーナでは児童労働を行う農家の94%がカカオ農家なのです。
働く子どもたちは学校へも行けず、将来の夢を描くこともできません。児童労働をゼロにし、みんなを笑顔にするために、スマイルカカオプロジェクトは始められました。
⑤無印良品・コオロギせんべい
無印良品は、「コオロギが地球を救う」という魅力的なキャッチコピーを掲げ、昆虫食のお菓子を販売しています。徳島大学と連携しながら、「コオロギパウダー入りのチョコ」と「コオロギせんべい」を開発しました。
・コオロギチョコ:コオロギパウダーを入れた高タンパクなチョコレートバー
・コオロギせんべい:未来の地球のことを考えたコオロギパウダー入りのせんべい。エビのような香ばしい風味が魅力です。
実は、昆虫は飼育における環境負荷が大きくありません。昆虫の飼育は家畜ほど大量な水を使用しません。飼料は、食べ残しや廃棄された食材を活用できるため、食品ロス削減にも貢献できます。
2013年に、FAO(国際連合食糧農業機関)は、気候変動への解決策の一つとして昆虫食を提案する報告書を発表。世界全体で爆発的な人口増加による食料不足が懸念されています。特に「タンパク質の供給が追いつかなくなる」と予想されているのです。
2050年には100億人を養うためには、大量の食材を確保するとともに、何億頭もの家畜に飼料を与えなければなりません。資源を大量に消費することで、環境への負荷が大きくなり、環境問題がより悪化してしまいます。
つまり、昆虫食の開発は、気候変動だけはなく、飢餓対策にも大きく貢献するのです。食品を扱う企業は、昆虫食の開発も検討してみてはいかがでしょうか。
個人でできるSDGsの取組み!3アクション
では、個人でできるSDGsの取組みには、どんなものがあるのでしょうか。以下に簡単にできる3つのアクションをまとめました。
①服のリユースに協力する
まずは、服のリユースです。不要になった服は捨てるとゴミになりますが、リユースやリサイクルに協力すれば資源へと生まれ変わります。先ほど紹介したユニクロのように、古着回収をする企業が増えています。
お近くのユニクロやGUに、不要な衣料品を持参してみてはいかがでしょうか。他にもH&Mも古着回収を実施しています。協力すると、お得なクーポンをもらえるのでおすすめです。
②エコバッグやマイボトルを持参する
エコバッグやマイボトルを持参することも大きな貢献です。プラスチック削減になるのはもちろんですが、節約にもつながります。
実は、マイボトルを持参すると、ドリンク料金を「10円引き」「20円引き」などにしてくれる飲食店があります。例えば、
マイボトルでSDGsへ貢献と節約ができるのは一石二鳥ではないでしょうか。
③エシカル消費にトライする
エシカル消費にトライすることも個人ができる身近な例です。エシカル消費とは、社会や環境に優しいものを購入することを意味します。例えば、
- リサイクルショップを活用する
- プラスチックではなく環境に配慮した素材のパッケージのものを選ぶ
- ブラックサンダーのような寄付付き商品を買う
などが、エシカル消費といえます。
いつもの買い物を少し変えることで、簡単にSDGsへ貢献できるのです。
持続可能なビジネスへのヒント
SDGsは世界的な目標ではありますが、企業や個人が取組むべきことはとても身近なものであるといえます。今までの生産過程や生活スタイルを少し工夫することでSDGsへ大きく貢献できるのです。
とはいえ、どのように取組むべきか分からないという方は、今回した紹介したSDGsの取組みに関する具体例をぜひ参考にしてみてはいかがでしょうか。食品メーカー、小売店、電力会社など、業種はさまざまですが、それぞれの企業が自社の強みを生かしながら、未来のためにできることをはじめていることが明らかになりました。
今の時代、「できないからSDGsに取組まない」という姿勢を見せてしまうと、社会的信頼を失い、持続可能な経営が難しくなる可能性が高まります。環境や社会に優しい商品や店舗づくりに努めることが、SDGsの目標12「つくる責任つかう責任」につながります。企業として経済成長するためにも、成功事例をヒントにしながら、自社でできることを1から検討してみてはいかがでしょうか。
因みにツヅケル編集部が推奨するビジネスパーソンのための「SDGsビジネスラーニング」ではこれらの内容を動画(eラーニング)で視聴することができます。月200円~/人で視聴できる企業研修。サービス開始2か月で1.6万人が受講したeラーニングを是非ご覧ください。