
脱炭素は、SDGsとも深く関係している言葉です。SDGsの目標を達成するのなら、脱炭素についても把握しておく必要があります。また自社でSDGs取組みを考えるにあたっても、把握しておきたい言葉の1つです。
本記事では、脱炭素について内容を解説していきます。SDGsへの知識を深めるためにも、脱炭素について確認してみてください。
【Pick Up】「ツヅケル」が注目したビジネスパーソンが脱炭素を読み解くポイント
- 脱炭素とは化石燃料からの脱却を意味する
- 脱炭素を実現するには国・企業・個人それぞれの取組みが必要である
脱炭素とは?
脱炭素とは、石油・石炭などを始めとする化石燃料からの脱却を意味する言葉です。
石油や石炭などの化石燃料は、CO2のような温室効果ガスを排出します。地球温暖化による気候変動を引き起こしているのが、この温室効果ガスです。
持続可能な社会を実現するには、脱炭素への取組みが必要になります。
脱炭素とSDGsの関係
SDGsの目標すべてを実現するためには、脱酸素に向けた取組みが求められます。脱炭素と直結しているのが、SDGsの目標13「気候変動に具体的な対策を」です。
さらに以下の目標に含まれているターゲットとも、脱炭素はつながりがあります。
化石燃料の使用は、地球温暖化・気候変動に大きく関係しています。しかし化石燃料は、私たちの生活や経済活動とも密接につながっているのが現状です。
そのため複数の目標で、脱炭素についてのターゲットが設定されています。
参照:JAPAN SDGs Action Platform | 外務省
脱炭素とカーボンニュートラルの違い
脱炭素と意味合いが近く、混同されがちなのがカーボンニュートラルです。カーボンニュートラルとは、温室効果ガスの「排出量と吸収量を均衡させる取組み」を意味しています。
2020年10月、政府は2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、カーボンニュートラルを目指すことを宣言しました。 「排出を全体としてゼロ」というのは、二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの「排出量」※ から、植林、森林管理などによる「吸収量」※ を差し引いて、合計を実質的にゼロにすることを意味しています。
※人為的なもの
温室効果ガスの排出量から吸収量を差し引き、実質的な数字をゼロにするのが「カーボンニュートラル」です。ただし人為的な排出量・吸収量だけがカーボンニュートラルの対象となっています。
厳密に考えると、脱炭素とカーボンニュートラルは別物です。しかし温室効果ガスは、人間の日常生活や経済活動に伴って日々排出されるものであるため、ゼロにはできません。
そのため脱炭素への取組みの1つとして、カーボンニュートラルが促進されています。
脱炭素社会を実現させるべき理由
脱炭素社会を実現させるべきであるのは、SDGsの目標だけが理由ではありません。そこで脱炭素社会を実現させるべき理由についても紹介します。
代表的な理由は以下の2つです。
取組みを検討するためにも、2つの理由についてチェックしてみましょう。
理由1.地球温暖化による気候変動が深刻であるため
脱炭素社会の実現が必要なのは、地球温暖化による気候変動が深刻であるためです。地球の平均気温は、1900年ごろと比較すると約1.1度上昇しました。現状では、ますます平均気温が上昇する見込みです。
近年は、日本に限らず世界的に大規模な災害が多発しています。そのなかには地球温暖化との直接的な因果関係を明らかにするのが難しい災害も含まれています。
しかし気候変動により、今後さらに豪雨・猛暑のリスクが高まる見込みです。結果として、健康被害や自然環境の悪化などをもたらすでしょう。北極や南極にある永久凍土が消滅すれば、海面が上昇して陸地も減ります。さらに世界的な気候変動は砂漠化や海の生態系に変化を及ぼすため、将来的な食糧不足を招くリスクもあるのです。
そのため、早急な脱炭素社会の実現が求められています。
理由2.化石燃料が枯渇するため
脱炭素社会の実現が必要なのは、化石燃料が枯渇するためでもあります。石炭・天然ガス・石油は有限です。
2019年の段階で、それぞれの可採年数は以下のように見込まれています。
- 石炭……132年
- 天然ガス……49.8年
- 石油……50年
新たな採掘場所が見つかったり、技術が進歩したりするなら、可採年数も伸びるでしょう。ただし現状のまま使い続けていると、いずれは枯渇します。
そこで化石燃料依存からの脱却が必要です。
参照:石油や石炭はあとどれくらい採れるのでしょうか? | よくあるご質問 [関西電力]
脱炭素社会を実現させるための日本政府での取組み
脱炭素社会を実現させるには、国単位での積極的な取組みが必要です。日本でも国として多数の取組みを行っています。
- 脱炭素事業を支援する機関の設立を検討
- 気候変動対策の見直し
- グリーン成長戦略
- ゼロカーボンシティの支援
- 脱炭素経営の促進
- ゼロカーボンドライブの支援
- 脱炭素ライフスタイルへの転換
- サステナブルファッション
ただし現在の段階で、検討段階の取組みもあります。
日本では、2030年までに、少なくとも全国100か所の脱炭素先行地域を決める「地域脱炭素ロードマップ」を作成しました。今後、脱炭素に向けた取組みが広がることが期待されます。
脱炭素社会を実現させるために企業や個人ができること
脱炭素社会の実現には、国や企業だけでなく、個人の取組みも必要になります。なぜなら日本国内の温室効果ガス排出量のうち6割は、国民のライフスタイルに起因するとの分析結果があるからです。
気候変動の原因となっている温室効果ガスは、経済活動・日常生活に伴い排出されています。国民一人ひとりの衣食住や移動といったライフスタイルに起因する温室効果ガスが我が国全体の排出量の約6割を占めるという分析もあり、国や自治体、事業者だけの問題ではありません。
そこで企業や個人にできる取組みについてもチェックしてみましょう。
1.再生可能エネルギーの活用
脱炭素社会の実現にあたっては、再生可能エネルギーの利用を考える必要があります。経済産業省によると、再生可能エネルギーの定義は以下の通りです。
エネルギー供給事業者による非化石エネルギー源の利用及び化石エネルギー原料の有効な利用の促進に関する法律(エネルギー供給構造高度化法)においては、「再生可能エネルギー源」について、「太陽光、風力その他非化石エネルギー源のうち、エネルギー源として永続的に利用することができると認められるものとして政令で定めるもの」と定義されており、政令において、太陽光・風力・水力・地熱・太陽熱・大気中の熱その他の自然界に存する熱・バイオマスが定められています。
定義によると、太陽光・風力・水力・地熱・バイオマスなどが、再生可能エネルギーに該当します。
再生可能エネルギーは、温室効果ガスを排出しないのが大きな特徴です。
日本はもともと資源に乏しいため、化石燃料の多くを輸入に頼っています。もし再生可能エネルギーの割合を高くできれば、エネルギーの安定供給にもつながるでしょう。
脱炭素・カーボンニュートラルの促進により、再生可能エネルギーを取り入れる企業も増えてきました。ただし日本は、他国よりも再生可能エネルギーのコストが高い傾向にあります。そのため再生可能エネルギーを主力電源として個人レベルまで浸透させるためには、コストの削減が重要課題です。
2.水素エネルギーの利用
脱炭素社会を実現するために注目されているのが、水素エネルギーの利用です。水素は現在でも、産業分野でのエネルギーに使われています。
水素は水と酸素から構成されていて、エネルギーとして使っても二酸化炭素を排出しません。再生可能エネルギーを使って水素を作るなら、CO2削減にも役立ちます。作った水素はタンクでの貯蔵も可能で、災害時のエネルギーとしても便利です。
水素エネルギーの利用を推進できれば、脱炭素に大きく貢献するでしょう。
ただし水素エネルギーは、まだ認知度も低めです。まずは国や企業などが水素エネルギーを促進して、民間で活用できる体制を整える必要があります。
参照:環境省_「水素」ってどんなエネルギー?_脱炭素化にむけた水素サプライチェーン・プラットフォーム
3.プラスチック製品の使用削減
脱炭素社会を実現するには、プラスチック製品の使用削減も求められます。
個人にとって身近で取組みやすいのが、プラスチック製品の使用削減です。
プラスチックは、そのほとんどが石油から作られています。石油を精製すると得られるのが、プラスチックの主原料である「ナフサ」です。ナフサを熱分解して、エチレンやプロピレンなどの化合物を作ります。この熱分解の段階でCO2が排出される仕組みです。
作られたプラスチック製品の多くはリサイクルされています。しかし廃プラスチックをリサイクルする工程でもCO2が出てしまうのです。そのため脱炭素社会を達成するには、プラスチック製品の使用そのものをなくす必要があります。
個人なら以下のような取組みが可能です。
- プラスチック以外で作られた商品を購入する
- 中身の詰め替えができる商品を選ぶ
企業なら、プラスチックのストローやカップを削減しているスターバックス等、他社の事例を参考にしながら、商品の脱プラスチックを検討してみましょう。
参照:カーボンニュートラルで環境にやさしいプラスチックを目指して(前編)|スペシャルコンテンツ|資源エネルギー庁
脱炭素社会の実現には国・企業・個人それぞれの取組みが必要
化石燃料からの脱却を意味するのが脱炭素です。日本では、2050年までにカーボンニュートラルを実現することを目標として掲げました。脱炭素社会を実現するためには、国・企業・個人それぞれによる取組みが求められます。
地球温暖化や気候変動は、すべての人にとって悪影響をもたらすものです。
また有限である化石燃料には、いずれ頼れなくなる日が訪れます。枯渇してから対処を考えるのでは間に合わないため、早い段階で代替を考えなくてはなりません。
個人で可能な取組みには限りがありますが、大勢が取組むと状況は変わります。
企業によっては、大幅なCO2削減ができる可能性もあるはずです。自社でSDGs取組みを進めるのなら、脱炭素・カーボンニュートラルについても検討してみましょう。
因みにツヅケル編集部が推奨するビジネスパーソンのための「SDGsビジネスラーニング」ではこれらの内容を動画(eラーニング)で視聴することができます。月200円~/人で視聴できる企業研修。サービス開始2か月で1.6万人が受講したeラーニングを是非ご覧ください。