阪急電車のSDGsの取組み事例 話題の「SDGsトレイン」で事業の効率化と対外的なPRの両立を実現

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    阪急電車の神戸線・宝塚線・京都線を利用されている方は、カラフルなラッピングが施された「SDGsトレイン」を見かけたことがあるのではないでしょうか。

    東西の大手私鉄グループである阪急阪神ホールディングス株式会社(以下、阪急阪神HD)と東急グループは、SDGs(持続可能な開発目標)の達成に向けて多様なメッセージを発信するため、連携して特別にデザインされた企画列車を運行しています。

    SDGsの認知度向上などを目的に、車体にデザインしてメッセージを発信する阪急電車の車両ですが、SDGsトレインの企画で取り組まれている内容はデザインだけではありません。わたしたちの暮らしに身近な電車を例に、SDGsの取組みをお伝えしていきます。

    写真(mokjc / Shutterstock.com

     

    【Pick UP】「ツヅケル」が注目した阪急電車のSDGs取組みのポイント

    • 大勢の人が利用する「公共交通」ならではの伝わる情報発信
    • 本業である鉄道事業において省エネの工夫を行う
    • 単体ではなく国や自治体と協働することでSDGs取組みの影響度を高める

    阪急電車のSDGsトレインは2022年9月まで運行中

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    関西圏が中心の阪急阪神HDは、2019年5月から「SDGsトレイン 未来のゆめ・まち号」の運行を開始しました。

    その後、2020年9月から首都圏を中心に運行する東急グループが加わり、「SDGsトレイン」のデザインが施された車両が東西で走るようになりました。

    当初は、両グループと国や自治体・企業・市民団体等が連携して「SDGsトレイン2020」を1年間運行予定でしたが、その期間がさらに1年間延長されました。延長後の「SDGトレイン2021」は2022年9月上旬まで運行される予定です。

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    カラフルなラッピングが施されたSDGsトレインは、以下の区間で見ることができます。

    1.運行期間
      2021年9月8日(木)~2022年9月上旬(予定)

    2.名称・運行区間
    <阪急阪神ホールディングス>
    ・名称:SDGsトレイン『未来のゆめ・まち号』
    ・区間
    ●阪急電鉄 神戸線・宝塚線・京都線および相互直通区間で運行
    ●阪神電車 本線・阪神なんば線および相互直通区間で運行

    <東急グループ>
    ・名称:SDGsトレイン『美しい時代へ号』
    ・区間
    ●東急電鉄 東横線・田園都市線・世田谷線および相互直通区間で運行

     

    詳細についてはSDGsトレイン公式ホームページをご参照ください。

    運行期間が1年間延長され、2022年9月まで見られるようになったSDGsトレイン。電車をご利用の際は、ぜひ探してみてはいかがでしょうか。

    出典:阪急×阪神×東急が協働 特別企画列車「SDGsトレイン」の運行を1年延長します|東急株式会社:ニュースリリース
    出典:東と西で、未来に向かって走る「SDGsトレイン」|東急グループ

    阪急電車のSDGsトレインは車体のデザインだけではない!車両内外もSDGs仕様

    先頭・最後尾車両(上:阪急電鉄 下:阪神電車)

    SDGsトレインのデザインは、SDGsの目標をイメージするさまざまな人や生き物たちが、より良い地域・社会を願いながら、未来へ向かってパレードをしていく様子が描かれています。

    デザインを担当するのは、阪急阪神HDの「ゆめ・まちプロジェクト」のシンボルマークを描く、ウマカケバクミコ氏。(※1)

    先頭と最後尾の車両のデザインは、見る人が親しみやすいデザインになっています。

     

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    優しいイラスト調のポスターも制作されており、SDGsの17の目標が親しみやすく表現されています。

    ※1:ウマカケバクミコ氏は、大阪府出身のイラストレーターで、キャラクター・広告・出版・Webなどのイラストを幅広く制作しています。

     

    車両には、阪急阪神HD・東急グループで共通のステッカーを使用して、外から見てもSDGsトレインとすぐに分かるようなデザインになっています。

     

    外からみるだけでもSDGsのメッセージが伝わるデザインになっていますが、実は車体のデザインだけではなく、車両の中もSDGs仕様になっています。

     

    車両の中に入ってみると、カラフルな色味で目を引く中吊り広告が掲示されています。

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    普段SDGsの話題に触れることのない電車の利用者の方にも、関心を持ってもらうきっかけになっています。

     

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    また、つり革もカラフルになっており、手元にはSDGsの内容が分かりやすく端的に解説されています。

    つり革を手にする時に、自然と目に入るよう工夫されているのが分かります。

     

    阪急阪神HDは、日本で初めてSDGsをテーマにした企画列車を運行し、SDGsの認知度向上に寄与する具体的なメッセージの発信が、社会的にも評価されています。

    また、後述の「阪急電車が取り組んでいるSDGsへの貢献事例:省エネの推進・温室効果ガス排出量の削減」でも言及しますが、実はSDGsトレインは車体内外のデザインで認知度向上を目的とする以外にも、実際に最新の省エネ車両を使用することによって消費電力量を削減する取組みもしています。

    これらのSDGsトレインの取組みは、持続可能な開発目標(SDGs)推進本部が主催する、第5回ジャパンSDGsアワードで「SDGsパートナーシップ賞(特別賞)」を受賞しています。

     

    通勤・通学で多くの方が利用する電車ですが、車両や中吊り広告でのメッセージの発信だけではなく、つり革のような自然に目に入る部分を活用した工夫や実際に省エネ車両を使用することによる消費電力量を削減する取組みは非常に参考になります。

    どんな企業でも、お客様や社会に掲げるメッセージを自社の商品や取組みを通じて発信していると思いますが、SDGsに取り組む企業の発信の工夫は、自社の発信方法を考える1つの物差しになるかもしれません。

    取り扱うサービスや商品が異なると、他社の発信方法や工夫を自社に応用するのは難しいですが、世界の全ての企業が「SDGs」という共通の取組みについて発信している今、その発信方法の工夫や考え方は、自社に活かしやすい状況にあります。

    SDGsに対する他社の取組みを学ぶことは、マーケティング部の担当者にとって商品やサービスの発信方法や工夫を学ぶチャンスとも言えるのではないでしょうか。

     

    出典:阪急×阪神×東急が協働 ラッピング列車「SDGs トレイン2020」を9 月8 日(火)より運行します! |阪神ホールディングス株式会社:プレスリリース
    出典:「SDGsトレイン 未来のゆめ・まち号」|阪神ホールディングス株式会社:写真館
    出典:「SDGsトレイン 未来のゆめ・まち号」|阪神ホールディングス株式会社:ポスターギャラリー
    出典:COOL CHOICE ウェブサイト|環境省

     

    広報PR:動画「SDGsトレイン みらいのゆめ・まち号」

    阪急阪神HDのWEBサイトでは、2019年から始まったSDGsトレインの取組みが、動画で分かりやすく発信されています。

    実際に電車が動いている様子や、SDGsの取組み内容の要点が端的に分かるようになっています。

     

     

    阪急阪神ホールディングスのSDGsの取組み方針

    阪急阪神HDでは、持続的な社会の実現に向けた今後の取組みの方向性を示した「阪急阪神ホールディングスグループ サステナビリティ宣言」を作成し、2020年5月に発表しました。

    「暮らしを支える『安心・快適』、暮らしを彩る『夢・感動』を、未来へ」の基本方針を掲げ、6つの重要テーマに対して具体的な取組みの方向性を定めています。

     

    【阪急阪神HDの6つの重要テーマ(マテリアリティ】

    • 安全・安心の追求
    • 豊かなまちづくり
    • 未来へつながる暮らしの提案
    • 一人ひとりの活躍
    • 環境保全の推進
    • ガバナンスの充実

    特に、阪急阪神HDの主力となる鉄道を含む都市交通事業は、電気エネルギーを多く使用する事業です。

    鉄道事業の運行に係るエネルギーの占める割合は約40%であることから、鉄道事業の運行における省エネルギー推進を重要視しており、さまざまな取組みを進めています。

    次項で、具体的な事例を交えてご紹介していきますので、ぜひご覧ください。

    出典:サステナビリティ宣言と重要テーマ | サステナビリティ | 阪急阪神ホールディングス株式会社
    出典:SDGsに向けた取組み | サステナビリティ | 阪急阪神ホールディングス株式会社

     

    阪急電車が取り組んでいるSDGsへの貢献事例:省エネの推進・温室効果ガス排出量の削減

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    阪急阪急HDは、SDGsの目標7「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」目標12「つくる責任つかう責任」目標13「気候変動に具体的な対策を」に基づき、省エネ機器の導入や省エネ活動の推進により、消費電力量の削減に努めています。

     

    冒頭に紹介した「SDGsトレイン」では、SDGsの認知度向上を目的としてデザインの発信だけではなく、最新の省エネ車両の使用によって消費電力量を削減しています。

     

    阪急電車の車両は、高効率のVVVFインバータ制御装置(※2)やモーターを採用したり、前照灯を含むすべての照明機器にLED照明を採用したりすることで、従来型と比較して約50%少ない電力の車両を実現しています。

    ※2VVVFインバータ制御装置とは、安定した出力の電気供給を行うために、周波数や電圧を制御する装置

     

    また、関西電力の「再エネECOプラン」を活用することで、電車の運行にかかるエネルギーを実質的に100%再生エネルギーで運行する取組みを実施しています。

     

    鉄道事業の場合、事業自体の継続性を高めるために電力コストを抑える工夫も大切です。SDGsの達成に向けて車両の省エネルギー化を推進することは、事業のコストを抑えることにもつながります。

    自社のSDGsの取組みを考える際の切り口は多岐にわたりますが、事業の継続性と社会の持続可能性が重なる領域に着目することで、事業の効率化と対外的なPRの両立を実現できるのではないでしょうか。

    出典: 環境保全の推進 | サステナブル経営の重要テーマ | サステナビリティ | 阪急阪神ホールディングス株式会社
    出典:サステナビリティデータブック2021|阪急阪神ホールディングス株式会社



    持続可能なビジネスへのヒント

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    阪急電車のSDGsの取組みの特徴は、自社の特性(公共交通インフラ)を踏まえ、重要な領域に重点的に取り組んでいることです。

    多角的に事業を行っている場合、幹となる主力事業の他、枝葉の事業もあります。企業がSDGsに取組み、具体的な目標値に向かって進んでいく時には、主力事業でしっかり社会的責任を果たすことで社会的な評価も高まるでしょう。

    阪急電車のSDGsの取組みの要点は、以下3点です。

    • わたしたちの身近な電車の車体、内装を通じてSDGsのメッセージを広く発信するだけでなく、伝わる工夫を行う。
    • 主力事業となる鉄道事業において、省エネ機器の導入や省エネの取組みを推進することで、事業におけるコスト削減と持続可能性を高める。
    • 国や自治体、他の企業、市民団体と協働してSDGsの取組み範囲を広げる。

    これからSDGsの取組みを検討される企業の方は、世界中で「SDGs」という共通の取組みが盛んに行われている現状をチャンスと捉えましょう。

    今はSDGsへの取組み方を通じて、発信方法の工夫・ガバナンス手法・マーケティングなど、あらゆる企業活動をSDGsという共通の物差しで計ることができ、自社への応用の仕方を学ぶことができる時代になっています。

    まずは、他社のSDGsへの取組み事例を広く知ることからやってみてはいかがでしょうか。

    ツヅケル編集部

    持続可能な社会を一緒に考えるニュースサイト「ツヅケル」の編集部です。これからの環境・食糧・気候問題等をビジネス側から思考し、みんなで克服し、より豊かで幸せな毎日が送れる方法を探すための情報を日々キャッチし発信しています。

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